5大聖龍とその女達 102
だが。誇り高い聖龍の剣である彼女に、寄生魔物の攻撃を恐れて逃げるなんて選択肢があろうはずもなかった。
両腕を硬化させて2本の手刀を形成、覚悟を決める。
(―――集中しろ!この一合ですべてを決める!)
そして敵2人の攻撃に、ようやく硬直の解けた首なし巨人が動き出す。
自身を形成するツタを分解し、無数の触手となって襲いかかる!
ラムサに防げない攻撃ではないが、対応してたら女性の救出ができなくなる。
そこでラムサはさらに加速し、ダメージ覚悟で触手の嵐に突っ込む!
ビュオッ!ビュビュビュビュビュッ!!
「くっ・・・おぉッ!?」
顔や服を掠めていく無数の触手。その感覚に、全身が本能がこの場から逃れたいとラムサに悲鳴を上げる。
だがそれでラムサはこらえた。
今すぐにこの場を逃れ、触手をぶった切りたい衝動と戦いながら、ひたすら前々へと進んでいく。
そして触手の嵐を抜けたその瞬間、ラムサは今まで押さえていたものすべてを解放した。
「はああぁぁぁッ!!」
ビビビビッ・・・!
目にも止まらぬほどの拘束の斬撃が、貼り付けられた女性の輪郭をなぞるようにきらめいた。
次の瞬間、触手という支えを失った女性の身体は、スローモーションのようにゆっくりと前に倒れていく。
ラムサはそれを優しく受け止め、すばやくそこから離脱しようとする・・・が。
ガクンッ、
「ッ!?」
剥がれ落ちた彼女の背後。
そこでうごめく緑色の不気味な物体が、彼女を逃がすまいと彼女の背中にコードのようなツタをつなげていた。
ラムサの背後からは魔物ウルゥの魔法である熱気がどんどん熱さを増して近づいてくる!
「〜〜〜っ、くぅおおぉぉッ!?」
前門の虎後門の狼に、ラムサは女性を抱えたまま力任せに上に跳んだ。
ラムサ渾身の跳躍に、魔物と女性を結ぶツタはブチブチと音を立てて千切れていく。
「死ぃねえええぇぇぇッ!?」
次の瞬間。うごめく緑の塊に、バスケットバールほどの大きさの火の玉が魔物ウルゥの叫びとともにたたきつけられた。
激しい爆音。爆裂四散する首なし巨人の身体。
女性を引き剥がしたラムサと、魔物ウルゥが着地したその時見たものは。
上半身を失い、ゆっくりとその場に倒れていく緑の巨人の下半身であった。