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元隷属の大魔導師
官能リレー小説 - ファンタジー系

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元隷属の大魔導師 84

それでもしばらくの間、デルマーノは空を見上げていた。

「…………さて、昼食でも狩りに行くかね」

そう言い、デルマーノは水袋から一口、生温い水を飲む。
そして森へと消えていった。




その日の日没、デルマーノはアルゴに発見される。
アルゴの背に乗った半泣きのアリアをなだめるのにデルマーノは苦労した。
泣き止み、抱き付いたアリアがデルマーノのマントからフィリムの残り香を嗅ぎ、一悶着あったのはまた別の話し。


そして、それから数ヶ月もの月日が経過した。


少女は夜の道を駆けていた。

いつも通っている道だが今日は違った。
そう、新月なのだ。
遠くから狼の遠吠えが聞こえる。
森がいつもより静かだと感じるのは気のせいだろうか?
やはり母の注意を聞いておくのだった。
まだ、吸血鬼に襲われ、死にたくはない。
はぁっはぁっ、と息切れした少女は歩を一旦、止めた。
その時、ガサッ!と音を立て、背後の茂みが揺れる。
少女は恐る恐る、振り向き、茂みを見た。
しばらく見つめていると再び、ガサッ!と茂みが鳴る。
ヒッ……と少女は悲鳴を漏らしたが、茂みからは目が離せない。
ドクンッドクンッ、と鼓動を感じた。
ニャアァォ〜……。
茂みから出てきたのは真っ黒い猫だった。
少女はふぅ〜、と安堵の溜め息を吐いた。
そう怯えることもない。
吸血鬼など遠い昔の伝説だ。
そう己に言い聞かせ少女は一歩、前へ踏み出した。
ドンッ……。
少女は自身よりも大きな何かにぶつかり、よろける。
何だろうと?と前を向くと……。
一人の美しい、痩躯の男が立っていた。
少女は一瞬、見とれてしまったがはっ、となる。
何故、こんな時間に、こんな場所に人がいるのだろうっ?
少女は不審に思い、男をよく観察すると……。
男はカッ!と口を開き、笑った。
その口からは人のモノでは決してありえない長い、長い牙が覗いている。
森に少女の悲鳴が木霊した。


「ひぃぅっ………」

アリアは恐怖に身をすくませ、息を飲んだ。

「きゃあぁぁっ!」

フローラは悲鳴を上げ、目を瞑り、頭を激しく揺らしている。

「………………」

ヘルシオは耳を塞ぎ、何事か唱えていた。

「イッヒッヒッ………」

デルマーノは三人の反応に満足したように大声で笑った。


今、四人は大型客船の甲板にいる。
船の帆と船首にはシュナイツ王国の国旗が掲げられていた。
この船の名は『海原を翔るイルカ』号。
シュナイツ王国が誇る豪華客船である。
何故、四人がこの船に乗っているかと言うと………

「ふ、ふんっ……くくく、下らないわねっ」

シュナイツ王国第一王女エリーゼが言葉とは裏腹に声を震わせて言った。
そう今、この船には第一王女エリーゼと第二王女ミルダが乗っている。
これから向かうワータナー諸島王国へ訪問する為だ。
また、シュナイツ王立学院の修学旅行も兼ねている。
現在、この船には船員を除いても二人の王女、貴族の子女達、そして護衛の近衛騎士総勢百十数名が乗船していた。

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