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元隷属の大魔導師
官能リレー小説 - ファンタジー系

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元隷属の大魔導師 1

アンギュラス大陸の南東に位置するカルタラ同盟国家群。他国の侵略に対抗するため同盟を結んだ十七の国々で形成されている。
カルタラ同盟国家群の盟主、シュナイツ王国は代々、女王が治める女系王制であった。

リューン暦0802年―シュナイツ王国女王、セライナはカルタラ同盟国家群における奴隷制の廃止を提言。同盟国の過半数が賛成意志を示した。

翌年、リューン暦0803年―奴隷制が撤廃され、これまで隷属を強いられていた人々に市民権が与えられた。
だが、元奴隷への差別が完全に消えた訳ではなかった。
奴隷制撤廃へ反対した国々は勿論の事、賛成した国の中でも一部の貴族達は元奴隷が国民になる事を快く思っていない。その様な思想は同盟国民にも根強く残り、元隷属者達が関わる事件が絶えることはなかった。



そしてリューン暦0817年―後に歴史へ名を残す、元隷属の大魔導師デルマーノの物語が始まる。

ガタッガタガタンッ…

二頭の馬に引かれた馬車が畦道を高速で走っている。屋根にはシュナイツ王国の国旗が掲げられている為、シュナイツ王国の要人が乗っている事が分かる。しかし、馬車には血の跡が付き、幾本もの矢が刺さっいた。
少し遅れて剣や弓を武装した十二人の男達が馬を駆り、その馬車の後を追う。

「きゃっ!」

ガタンッと大きく跳ねた馬車の中で、豪勢なドレスに身を包んだ少女が悲鳴を上げる。
平時なら、気位の高そうな可愛らしい少女に見えたことだろう。

「アリア!…何がどうなったらこうなるのっ?」

二人しか乗っていない馬車の中で少女は対面に座る女騎士へ現状の説明を求めてくるが、アリア――と呼ばれた女騎士は焦燥を浮かべるだけであった。
目の前に座るシュナイツ王国第一王女、エリーゼ・フォウ・イントーラ・ド・シュナイツが同盟国家へ訪問をするに辺り、自分が近衛騎士を八人率い、護衛の任務に就いた。
十四年前の奴隷解放以来、同盟国内に不穏な空気が漂っていたのだが、訪問先では何事も起きず無事に終わり、今日中にはシュナイツへの国境を越えられる筈であった。
しかし、一時間程前に今も追ってきている男達の奇襲を受け、自分以外の騎士は全滅。それでも彼らが最後の力で作った逃げ道に馬車を走らせ、現在に至る。

緋色の髪を背中で一つに纏め、磁気のように白い肌、ツンと通った鼻梁を持つ美しい女騎士。
そんなアリアは、焦燥の中、それでも冷静な部分で情報を分析する。
辺りは鬱蒼とした森であり、自分一人だけであれば追っ手を撒けるかもしれない。だが、姫を連れてとなると恐らく、無理だ。
次第に追っ手との距離が詰まる中、アリアは二十二年の短い人生を反芻していた。


(はぁ〜……恋、してみたかったな。マラネロ劇場の新作も見たかったし………でも、任務は全うする!)

「ちょっと、アリアッ!」

アリアはハッと目を覚ました様に顔を上げると、覚悟を決める。

「姫様、私が時間を稼ぎます。お逃げ下さい」

「…アリア……でも」

「追いつかれるのも時間の問題です。奴等を撒いたら、後は分かりますね?」

「……っ。ええ…」

幼い頃から親しいアリアの身を挺しての進言にエリーゼも覚悟する。
二人は馬車の御者台へ出ると、それぞれ馬に跨る。鞍は無いが短時間なら乗れないことはない。

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