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元隷属の大魔導師
官能リレー小説 - ファンタジー系

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元隷属の大魔導師 79

「残念……上だっ!」

「っ!」

ヒュッ……

『飛翔』により飛び上がったデルマーノは降下すると鞘を取り、偽装を解いた戦闘槍でフィリムの手から突撃槍を巻き取るように絡め取った。

「きゃっ……」

フィリムの口から悲鳴が漏れる。
突撃槍は崖下へと落ちていき、ドボン、と水音を立てた。

「さ〜て………武器も無くなったし、どうする?俺としては無駄な抵抗は止めて、素直に投降して欲しいんだがな?」

戦闘槍に鞘を付け、再び魔導杖へと偽装すると、デルマーノはそう言う。

「私の……負け、か」

「ああ」

「だが………投降する気は……ないっ!」

そう言うとフィリムは崖へと駆け出した。

「待てっ!」

デルマーノも走り出すが間に合わない。

「デルマーノ………最期に貴殿のような男と死合えて……誇りに思うっ!」

フィリムは崖から身を投げ出した。
その姿がデルマーノの目にスローモーションで流れる。

『………デル、マーノ……あなたは…本当は……優しい子………ありがとう……あなたに会えて……良かっ、た………』

デルマーノの脳裏に声が聞こえた。

「ソフィーナァァァッ!」

デルマーノはフィリムの後を追い、崖から飛び降りる。
手を伸ばし目を瞑るフィリムの肩を掴むと、抱き寄せた。

「ちくしょ………間に合わ……」

ドボオォォォン………

盛大な水飛沫が上がる。
二人は激流に飲まれた。




パチッ………パチパチ……バチンッ!

「う……ん〜……………はっ!」

フィリムは薪の爆ぜる音に目を覚まし、飛び起きた。

「………ここは?」

フィリムは辺りを見回す。洞窟のようだ。

「たしか、私は………崖から……」

そうだ。崖から飛び降りたのだ。
そして後をあの男が追って……

「よう、起きたか?」

「っ!………デルマーノ」

洞窟の入り口にデルマーノが立っていた。
両手に絞めた鳩を一羽ずつ持っている。

「ヒッヒッ………よく寝たな?もう朝だぞ」

「な………何故、私を助けた?」

「あん?」

「私は敵国の人間だ。それを助けるなど………」

「…………俺の前でお前のような年頃の女を死なせたくなかった。それじゃ、答えになんねぇか?」

「なっ………何を馬鹿な……騎士道のつもりか?」

「はっ……生憎、んなもん持ち合わせちゃいねぇよ」

「ならっ!……痛っ」

フィリムは苦痛に眉をひそめた。
その時に漸く、自分に掛けられていた毛布代わりのマントがシュナイツ宮廷魔導師のモノだと気が付く。

「………二人揃って激流に揉まれたんだ。岸に上がった時にゃ全身打撲さ。無理はすんな」

全身打撲、の割には身体は痛まない。少々、筋が軋むだけだ。
はっ、とフィリムは察した。

「お前が、治癒を?」

「あん?まぁな。得意じゃねぇんで苦労したよ」

「そうか、それは済まな………待て、お前は今、全身打撲と言ったな?」

「ああ」

「まさか……お、お前っ」

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