元隷属の大魔導師 59
そこは石造りの宿である。
一泊、銀貨十七枚は宿としては破格の値段だ。高すぎる。
庶民は滅多な事がなければ利用出来ないため、ここの利用客の殆どが貴族か商人だ。
しかし、この宿はその値段に釣り合うだけの機能がある。
各部屋には小さいながらも浴室があり、また壁には『消音』の魔導具が埋め込まれていた。
デルマーノのように行為の音が漏れない目的で利用する以外にも密談などに適している。
そんな高級宿だ。
「いつも思うのだけど、貴方ってお金持ちよね」
「侯爵家の人間にゃ言われたかねぇが……まぁ、そうだな」
デルマーノはぽりぼり、と頬を掻いた。
「こう見えて結構、手広く商売をしてっからな。魔導具やら魔導像を売ったりして……俺の年金の三倍くらいの稼ぎがあんだ。ヒッヒッヒッ……」
デルマーノは懐にしまった財布を叩いた。様々な金属の擦れ合う音が聞こえる。
そんな会話をしながら階段を上り、三階の指定された部屋に着いた。
ガチャ……
金属のノブを回し、室内へと二人は入った。
マントを脱ぎ、掛けるとデルマーノは更にするすると上着を脱いでいった。
「………相変わらず気が早いわね」
「イヒッ…アリアこそ始まりゃ乱れかたはすごいぞ」
「もうっ」
「ヒッヒッヒッ……」
デルマーノはマントを脱いだアリアを背後から抱き締めた。
そして彼女の耳元へ軽く、息を吹きかける。
「あんっ……ちょ、待って」
「ヤダ」
デルマーノは背中から回した手でアリアの豊満な胸を揉んだ。
たわわに実った果実は彼の手を弾力で押し返し、形を変えていく。
「ぅ……ひゃん………あう……んんっ…」
「ヒッヒッ……な?乱れ始めた」
「もぉうっ……い、じわるぅ………ふぅ、ん…」
「俺の中で………盛大に乱れると良い…」
デルマーノはアリアの服の裾から手を入れ、下着を剥ぎ取ると直接、胸を弄くり始めた。
「あっ……ひゃ…ぅう?………んぁ……」
喘ぐアリアと肩越しに唇を合わせるとデルマーノは硬くなり始めた胸の突起を強弱をつけ、摘む。
デルマーノは何度もアリアと交じ合う内に、乳首は硬くなり始めてからが感じるのだと学習していた。
その経験通り、アリアの声に混じる色が強くなる。
「ちゅ……あぁ…ん………ふぁ…んちゅ……」
アリアはデルマーノへ体重を完全に預け、愛しき彼からもたらされる快感に身を委ねていた。
その時、アリアは、はっ、となった。
今朝、フローラに言われた言葉が頭をよぎったのだ。
『与えられるだけの女は、いずれ飽きられるわよ』
そうだ。このままではいつも通り、デルマーノが自分を攻めるだけではないか。
アリアは決心するとクルリ、と身体を反転させ、デルマーノと向かい合う。
「?……どうした?」
デルマーノは疑問符を浮かべ、尋ねた。
アリアは快感で麻痺した頭で必死に己の意思を伝えようとする。
「あのね……いつもデルマーノが攻めるの………だから…」