元隷属の大魔導師 28
身体のあちらこちらに残る彼の温もりがアリアを混乱させた。
あうあうと俯くばかりで、言葉を発する事ができない。
「………けっ」
「きゃっ……」
デルマーノは『飛翔』を唱えるとアリアを抱き、飛び上がった。
いきなりの事に驚きながらも日が落ち、紫に彩られた山々を見つめる。
「アリア、『俺の女』ってのは大袈裟じゃねぇ。俺ゃなお前が好きだ」
「う、そ………」
「嘘なもんか。つーか、俺だって結構恥ずかしかったんだがな。イッヒッヒッ……」
笑い声をあげるがそれは照れ隠しなのだろう、目が在らぬ方向を向いていた。
そんな彼の態度がどこか可笑しく、アリアはクスッと笑みを零してしまう。
「……なんだよ」
「フフッ……デルマーノ、あのね…私も貴方が好きよ。乱暴に見えて、本当は優しい貴方がね♪」
一度、口外すると女は強いモノでアリアはそっとデルマーノの唇に己のソレを重ねた。
「んっ………な、何を」
「相惚れなんだから……問題はないでしょ?………んちゅ」
二人は再度、接吻をする。
今、二人の間には貴族も奴隷も無い。ただ、一人の男と女なのだ。
アリアにはそれがカルタラ同盟国家群の希望に思えた。
暫く空の逢い引きを楽しむと、デルマーノは小高い丘へ降りた。
日は完全に沈み、月明かりの下で二人は抱き合う。
「………デルマーノ」
「…あん?」
「……ありがとう」
「……何がだ?」
「貴方と会ってから今まで、全部よ」
「……ふんっ」
デルマーノはアリアへキスの雨を降らせた。
己の腕の中にいる小柄な彼女が愛しくて、愛しくて堪らないのだ。
スッと彼女の背中へ回していた右手をマントの中へ入れ、鎧の留め金を外す。
「んっ……デルマーノ、あのね……私…初めてなの……」
「……はっ、んな事か…俺だって初めてだぜ?」
「えっ……だって、お風呂の時…」
アリアは一昨日の晩、浴場で自分の裸を見られた時、デルマーノが全く動じなかった事を言っているのだ。
「落ち着いてて……だから、私…てっきり……」
「おいおい……よく考えろよ。七つの時からジジイと塔に引きこもってんだぜ?」
「そう……だけど…」
自分以外の誰かとデルマーノが恋仲になった事があるのではという不安は消え、代わりに自分が彼の唯一の女性になれるという一種の独占欲のような幸福がアリアの胸の内に生まれた。
そして彼女は愛を確認したくなる。
「……デルマーノ。大好きよ…」
「……けっ」
デルマーノは彼女に己の唇を強く重ねた。
それはアリアにとって、充分すぎる答えである。
「ちゅ……んっ………ふぅ……む…」
アリアは貪欲にデルマーノを感じていく。
するすると己の衣服が順番に剥がされていくのが分かった。
「ぅっ?……」
露出した胸をデルマーノの長い指が優しく触れる。
アリアは瞬間、身を強ばらせたがすぐに慣れた。すると、くすぐったいような痛いような、理解できないが決して嫌ではない感覚が身を駆け抜ける。