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元隷属の大魔導師
官能リレー小説 - ファンタジー系

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元隷属の大魔導師 256

まず、正型に持った右手の剣で突かれた刃を薙ぎ、次に逆手に持った左手の剣で振り下ろされる刃を往なす。
丁度、デルマーノをエドから見て、右手側へと受け流したような格好だ。
一見すれば、エドが優勢に見えた。
しかし、元奴隷闘士同士の戦闘は、この程度では終わらない。
前のめりになったデルマーノはすかさず、左足で踏み込み、右足の爪先をエドの太股へと打ちこんだ。
エドは左足をわずかに上げ、膝でその蹴りを受け止める。
だが、それでも威力を殺すことはできなかったのだろう、エドの上体が揺れた。

密着する、黒髪の元奴隷の魔導師と金髪の元奴隷の剣士――。
アリアには、一瞬、デルマーノの身体が沈んだように見えた。
直後、

「ヒヒッ」

デルマーノが、嗤った。
両手の『光魔の剣』を、エドの双剣の柄にからませるように押しだした。
本来ならば、エドほどの剣士ならばいくらでも対抗策が講じられただろう。しかし、現在、彼は右足一本で立ち、かつ、体勢も万全ではなかった。
その状態では、反応の方法は限られる。
その中ではもっともマシな防御法だったのだろう、エドは肘を曲げ、デルマーノの絡み手から逃れようとした。
けれど、相手は『あの』デルマーノである。
おそらく、エドが最善の方法を選択することまで呼んでいた。
密着する身体を、さらに半歩、近付ける。
すでに、武器を持った状態での間合いではなかった。
押し合うような格好のふたり。
体重だって同じくらいのはずだ、片足立ちのエドよりも、両足で、しかも重心を沈めたデルマーノほうが断然、有利な戦況になった。

「ぅっ――」

「イヒッ!いただきっ」

エドがうめき、デルマーノはほくそえんだ。
いつの間にか、デルマーノの両手から『光魔の剣』が霧散し、代わりに、つい数秒前までは確かにエドの手に収まっていたはずの双剣が握られている。
この距離だ、なにが起きたかは定かでない。
けど、確かなのは、

……武器を奪ったデルマーノと、奪われたエド。

勝敗は決した。

「くっ」

デルマーノの当て身に、エドがよろめいた。
だが、性悪魔導師の追撃は止まらない。
足払いでエドを仰向けにこかすと、その胸に右足を乗せ、その首へと双剣の刃を振り下ろした。

「っ!」

周囲の少年たちが息をのんだ。
アリアや、こちら側の者たちも、それは同じである。
あの体勢で、エドがデルマーノの凶刃をどうにかできたとは、誰も思えなかったのだ。

しかし――

「くぅ、うぅ?」

若い男の唸りが聞こえた。
……エドゥアールのモノだ。
見ると、鋏の要領で双剣は交差されて地面へ突き刺されており、その刃同士の間にできた空間にエドの首は収まっていた。

「……ふぅ」

アリアは、安堵の溜め息を漏らす。
耳を済ませると諸所で似たようなものが聞こえてきた。
そんな中、デルマーノが笑い声をあげる。

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