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元隷属の大魔導師
官能リレー小説 - ファンタジー系

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元隷属の大魔導師 255

ヘルシオを中心に、火焔が、まるで爬虫類の舌のように大地を舐めつくそうと広がった。
アリアやフローラ、吸血鬼の主従は、その炎の円陣の内側に納められているため安全だが、外側にいる少年たちへは、一秒の数分の一もの時間で、火焔の波は襲いかかる。
高熱に歪む視界の端で、エドが少年たちを庇うように剣を振ったのが見えたが、一介の剣士では対魔術などは使えないだろうし、そもそも、少年ら全員を庇えるわけでもない。
アリアは、火だるまになった金髪の青年を幻視した。

しかし、エドの双剣が炎の先端を切り裂いたその時――

幾つもの閃光が、アリアの目の中で踊った。

「っ?」

ヘルシオが息をのんだ。
しかし、その理由を悟ったアリアも、似たような心境である。
なぜなら、それは光の剣――鍔から先、根元から刀身の下三分の一ほどが捻れている、輝く長剣だったからだ。
二十本ほどの、宙に漂う長剣はエドや少年たちの前に現れると、ヘルシオの放った火焔魔導をみるみる吸い込んでいく。

そして、

「……光魔の、剣?」

自身の魔法の効力が切れたのと同時に、ヘルシオの唸るような声が聞こえてきた。
茫然とした色を含み、ヘルシオは続ける。

「しかも、二十本以上を同時展開?……こんな、ことができるのは……」

『――ヘルシオ、おまえなぁ?もっと、スマートにやれよ。なァ?』

「っ!」

声が聞こえた。
アリアにとって、もっとも耳心地のよい男の声……。
風に乗せたような、不明瞭だった声は、確かな現実味を帯びた声に変わり、続けられる。

「んな、魔法でドカンとやったって、コイツらとの溝は深まるばかりだぜ?別に殺し合いにきたわけじゃねぇだろうが」

一陣の風となって、自分たちとエドとの間に紫と朱の裏地のマントが翻り、ひとりの男が立っていた。
その正体は言わずもがなだ。
アリアはその名を呼ぼうと口を開いた。

「デル――」

「いいか、ヘルシオ?こりゃ、喧嘩だ。善も悪もネェ。ただ、鼻っ柱をへし折ってやりゃあいい――ってなぁっ!」

しかし、闖入者――デルマーノが喋り出してしまい、仕方なく、アリアは口をつぐむしかなかった。
当のデルマーノは、ヘルシオの『火焔』を吸い込み損ねたのか、はたまた、意識的に残したのか――おそらくは後者だろうが――未だに、二本だけ宙に浮く『光魔の剣』の柄を左右、それぞれの手で握る。

「イヒッ!」

一分の迷いもなく、デルマーノがエドゥアールへと駆け出した。
エドも、闖入者が敵方だと判断するやいなや、二本と双剣を構え直す。
距離にして十数歩、しかし、時間にしたらほんの二、三秒で互いを間合いに捉えた。

「ひゅっ」

デルマーノが、鋭い呼気を吐きだした。
同時に右手に持つ『光魔の剣』を振り下ろし、左手の魔法剣は突き出す。
このトリッキーな攻撃が双剣使いの醍醐味だ。
もちろん、エドだって双剣使いである、デルマーノの攻撃は読んでいた。

「っ……はぁっ!」

左足を軸にするように、身体を回転させる。

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