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元隷属の大魔導師
官能リレー小説 - ファンタジー系

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元隷属の大魔導師 254

「レイ!己のいうことが聞けないのか!」

「〜〜ぅ。で、でも……それでも、俺たちは、やんなきゃ気がすまねぇんですよッ!」

この少年の名だろう、レイと呼ばれた少年は、一瞬の怯みをみせたものの、結局、我を通した。
それは、他の少年たちも同じだったようだ。それぞれの獲物を、それぞれの都合のよい位置へ構えた。
エドが歯噛みするのが見えた。
彼が自身で言っていたように、立場は教師といった具合なのだろう。どんなに気取っても二十歳そこそこでは子供たちを完全に従わせることはできないようである。
エドゥアールが、腰に履いた双剣をシャンと鳴らし、抜いた。
右手では正型に、左手では逆手に、その半月刀を構える。

「ホ〜ラホラ。結局やることになっちゃうんだからさ……。ソレいけ、ヘルシオ!」

「一応、私、貴女の上司なんですがね。なんで、命令されているんでしょう」

と、言いながらもヘルシオは、先端にカナリアの宝石飾りのついた長杖を構えた。
短杖も持っているし、長剣も佩いているのだが、こういったときは魔導師らしい長杖を用いるのかもしれない。
その赤みがかった耳までのくせっ毛が、フワリと揺れた。
普段は、のんびりとした垂れぎみの双眸が開かれ、翡翠色の瞳が少年たちをにらんだ。

「これでも、元魔導騎士隊将軍にして、現在は六大魔導の弟子。手加減をしても、貴方がたを生かしておける保証などはありませんよ?」

チンっ、と彼の長杖の石突きが大地を弾き、その先端が曇天へ掲げられた。
アリアは自分の首筋がチリチリと痛むのが感じられた。
デルマーノが魔術を行使する際に感じるモノに似ている。
――彼自身の言の通り、ヘルシオは上司であるデルマーノの派手さに隠れがちだが、高い能力の魔術師であることには変わりはない。
最強の吸血鬼シャーロットの、一の眷属ジルを封じ込めた結界だって、実際に行使したのはヘルシオだ。
デルマーノも、なんだかんだと言ってヘルシオをシャーロットの上司に据えているし……。

ヘルシオの、長杖の先――カナリアを象った宝石飾りが澄んだ青色の閃光を上げる。

「まあ……善処はしますがね。生きているようにするだけ、ですが……」

ヘルシオを中心に、熱風が吹きさすぶ。
その攻撃圏外にいるアリアすら、背筋が強大な圧力に震えた。
その圏内にいるエドや少年たちの顔が強張るのも当然だ。
しかし、ヘルシオもデルマーノやノークと時間を半年以上も共にしているのだ、己や己の大切なモノ――まあ、つまりフローラだ――に剣を向けた相手に気をかけてやるほどの優しさなどは持ち合わせてはいないのだろう。
その下がり気味の口端の薄い唇を、静かに歪めた。

「――ですから、遠慮なく燃えてください」

赤毛の青年の持つ長杖の先端がいよいよ、身をすくませるほどの閃光を放つ。
ヘルシオがそっと杖を持ち上げ、その石突きを大地へと垂直に打ち下ろした。
エドが、少年たちが各々の最適の行動に入ろうとしていたが、もう遅い。

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