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元隷属の大魔導師
官能リレー小説 - ファンタジー系

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元隷属の大魔導師 244

んん〜っ、とマリエルは吊りがちの目を細める。
すると修道服を纏うことで醸し出されていた大人びた雰囲気がなくなり、外見の年齢がグッと低くなった。
自分もマリエルもこのウェンディの奴隷街の出身である。だが、産まれた時から互いに知っていたわけではなかった。
自分は四つの時に母が死に、家族がいなくなってしまい、かと言って四歳といえば奴隷ならば働き始める年齢だ。
そういった幼い子供たちが共生するために集まったコミニティ――そこでマリエルと初めて会った。
彼女は自分よりも二つ下くらい、別れる頃は大体五歳前後。
ってことは……十九か二十歳か。
自分たちには正式な誕生日というものがない。
毎日がただ、変わらぬくそったれな日々だったからだ。もっといえば、自分のように片方だけとはいえ、親の記憶があるのは幸せな部類だといえる。
奴隷出身者が奴隷だったころ、三十まで生き残れるのは百人にひとりとさえいわれていたからだ。

――まあ、いい。

デルマーノは久方ぶりの義妹へ熱く抱擁した。

「デルマーノ……」

「元気そうでよかった。今はこの教会に務めているのか?」

「うん。あっ……もちろん、ちゃんと洗礼は受けたんだよ?」

「洗礼?ウェンディでか?」

「まさかっ。この国の教会が私たち奴隷上がりに祝福なんてしてくれるわけがないじゃない。……ソフィーナ先生のときもそうだったでしょ?」

「……ああ」

デルマーノは小さく頷いた。
ただそれだけの動作なのだが、よく見れば眉根に力が込められている。
奴隷解放直後、ソフィーナの身に危険が及ぶかもしれないというときにデルマーノたち、彼女の生徒は近場の教会に救助を求めた。
しかし、教会の答えは否。自業自得だというのだ。
それからだ、母の教えを破り、デルマーノは祈るのを止めた。
そんな所で、必要なこととはいえ洗礼などは受けたくないに決まっている。
ふっ、とデルマーノは微笑んだ。彼にしては珍しい――少なくともアリアやシャーロット、ジルといった彼の庇護の対象ですら、滅多に見ることのできない表情だった。

「デルマーノは……今はなにをしているの?詐欺師?」

極真面目な表情でマリエルは首を傾げてくる。
デルマーノは頬を引きつらせた。

「さ、詐欺師?なんで俺が……」

「だって、その服……宮廷魔導師のマントじゃん。しかも、紋章はシュナイツ王国。新手のそういう詐欺をしてるのかなって」

「……。なんで、わざわざ穿って考えるんだ?普通に俺がシュナイツの宮廷魔導師って考えりゃいいだろ」

半眼で妹分の少女――というほど、若くはない娘を見つめる。
一方、当のマリエルはこれでもかというほど、大きく両の目を見開いていた。

「えっ、と……ほんとに?」

「んぁ?ああ……本当に宮廷魔導師だ」

「ははっ……。もうっ、デルマーノってば久しぶりに会ったくせに冗談、キツいぜ〜」

「んで、そんな頑なに信じねぇんだよ?」

「……マジで?」

「大マジだ」

マリエルはしげしげとデルマーノを見つめた。

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