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元隷属の大魔導師
官能リレー小説 - ファンタジー系

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元隷属の大魔導師 245

そして、ちょんちょんと宮廷魔導師のマントの裾を引っ張る。
しばらく、マントを摘んだり、デルマーノの周りを何周か回ったりした後にマリエルは唸った。

「……上質な生地だけど、使い古された感はある。う〜ん……やっぱ、本物かあ」

「おまえはそこまでして俺を宮廷魔導師だと認めるのが嫌なのかよ」

「だってっ、普通はなれないよ?信じられないわけじゃない……わけないんだけど……」

「否定したな、いま」

「……どうやって、なったの?こんちくしょうめ」

「相変わらず良い性格しているな、おい……」

デルマーノは小さく、しかし、どこか嬉しそうに嘆息する。

「あの後――ソフィーナを助けた後、俺は彼女の父親の所に運んだ」

「えっ?でも、」

「ああ。相当な衰弱をしていて、おまえのその予想通り、道中で息を引き取った」

息を引き取った。
粗野な表現を好むデルマーノとしては最大限の上等な発言である。

「んで、その父親ってのが、かの大陸最高の魔導師――六大魔導のひとりだった、ってわけよ」

「へぇ……それはまあ、奇縁だね。それで、給金はいくらなの?」

「宮廷魔導師になった知り合いに最初にする質問じゃないな」

他にもいろいろあんだろうがよ、とデルマーノは付け足した。
マリエルはプクリと頬を膨らませて反発の意を示す。
とても二十歳前後の娘の態度だとは思えなかった。
案外、シャーロットも大きくなれば――成長することが可能ならば、だが――こんな感じなのかもしれない。

「えぇ〜っ?他にって……う〜ん……特にないなぁ。で、いくら?」

悪びれもせずに再度、問いかけてくる妹分にデルマーノは大きくため息を吐いた。
僅かしかいられなかったが、幼少期の教育が間違っていたのかもしれない。

「……銀百と必要経費だ」

「へぇ〜……意外と薄給なんだ」

「薄給?勘違いすんなよ。年俸じゃない、月俸だ」

「へ?」

「月俸、銀百枚」

「ええぇぇっ?百!?うそ……マジ、なにそれ?私の何倍なのよっ?」

「知るか」

「こんの、デルマーノのクセに十五年で出世しやがりやがってぇ〜!」

マリエルは忌々しそうにデルマーノのマントに記されたシュナイツの王国紋を睨む。
そして、さっと腰の後ろに手を回すと再び前に出された右手には小さな袋が握られていた。

「そのムダに高い給料を浄化してあげる」

寄付しろ、ということか。
デルマーノは呆れて、肩をすくめる。

「……。浄財を要求してくるシスターってのはおまえでふたりめだぞ?」

ひとりめはワータナー諸島王国の街中に建った古教会の副司祭にしてエクソシストのウルスラである。
どうやら、自分の周りに集まる女宗教家っていうのにはロクな人間がいないようだ。
――ソフィーナを除いたら、だが。
仕方ない、とデルマーノは自身の銭袋から銀貨を五枚、マリエルの集金袋(?)に入れてやる。

「おおっ、大金……幸あれ」

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