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元隷属の大魔導師
官能リレー小説 - ファンタジー系

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元隷属の大魔導師 237

見た目相応の輝かしい笑みを浮かべるシャーロット。
デルマーノは小さく、独り言のように返した。

「……変わらねぇさ。あの国は」

「えっ?」

「ヒヒッ……何でもねぇよ」

デルマーノはシャーロットのその小さな頭を優しく撫でた。
むぅ、と唇を尖らせる吸血少女。

「もうっ。子供じゃないよ?」

「知ってるよ。見た目と中身以外はな」

「そうそう、って――お兄ちゃんっ?それじゃ、全部子供じゃんか!」

「いんや、実年齢だけは大人だ」

「ううぅ〜〜っ」

頬を膨らませ、憤慨する少女にデルマーノは微笑んだ。
そんな主格の性悪魔導師の態度にシャーロットは目を見開く。

「お兄ちゃん……なんか、優しい……」

「そうか?」

「うん。ちょっと、気色悪いよ」

「誰が気色悪いだ」

デルマーノはシャーロットの頭を小突いた。が、それは赤ん坊すら泣かせることはできそうにないモノである。
いよいよ、シャーロットは疑惑の視線を鋭くした。
試すような声色で訊ねてくる。

「ねぇ……お兄ちゃん?」

「なんだ?」

「お腹減ったよ――いや、そういうお菓子で満たす方じゃなくて……。その、血の方なんだけど……」

「ああ。ホレ……」

デルマーノが腰に吊した焼き菓子を収めた袋に手を伸ばしたため、シャーロットはあわてて付け足した。
まあ、要は吸血させろ――ということだ。
だが、この主人であるリッチの青年はなかなか血を恵んでくれはせず、この一週間ほどでは一編もなかった。
それだって、シャーロットがゴネにゴネた末、である。
なのに今日はなんの問答もなく、デルマーノは首筋を差し出してきた。
シャーロットは気味が悪くなり、うすら寒いモノを感じる。
いや、でも……もしかしたら、何かしらの意図やら意地悪の類かもしれない。うん。きっと、そうだ――。
こう、唇をそのちょっと日に灼けた逞しい首筋に添えて、牙を立てようとしたところで――。

……あれ?
い、いや……まだなだけだ。

そして、この吸血鬼特有の鋭い二本の牙が肌をその突き、血管へと達しようとしたら――。

……?
ここでも、なかったのかな?

じゃ、じゃあっ……ここで血を吸ってるときになんか、魔力で意地悪を――し、しない?

おっかしいなぁ〜……。いや、それにしてもやっぱ、お兄ちゃんの血は美味しいね。
なんての?
こう、濃厚で身体に良い感じ?

――って、おい!

「お兄ちゃんっ!?」

「ぅお?……なんだ?なんか、変な味でもしたか?」

「しないっ!デリーデリーだったけれど……。なんで、血をくれたのっ?」

「そりゃ、シャーロットが呑みたいって言ってきたからだろう?」

「そうそう。だから、私が呑んで……じゃなくて!違うのっ!」

「……?違ったか?」

「う、うぅ……うぐ……うぐうぐ…………」

「うぐうぐ?」

「うわぁぁ〜〜んっ!」

呻いていたシャーロットは突如、デルマーノから身体を放すとアルゴの背から飛び降りた。
といっても魔導師だ、『飛翔』なんて朝飯前である。

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