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元隷属の大魔導師
官能リレー小説 - ファンタジー系

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元隷属の大魔導師 230

だとすると……今は冬の真っ直中だから、一年が経過するまでにまだ四半年もある。
その短い間にいろいろなことがあった。

入局、一ヶ月で同盟国外――ターセル皇国への派遣。
シンシア妹妃とその姫二人、ユーノとリリアの護送任務だったはずが、デルマーノの陰謀――陰謀……うん、間違いなく陰謀、策謀の類だった――により皇子ヒルツをも密かに亡命させた。
ヒルツはヘルシオと名を変え、現在、デルマーノの部下、シュナイツ近衛局近衛魔導隊の副長となっている。
そういえば、初めて会ったヘルシオ――ヒルツはツンツンとしていた。
エーデル隊長と険悪になったのはよく覚えている。
しかし、そんな態度も彼が滅びゆく国の王族だったからなのだろう、本性は気の良い青年だ。
なにせ、『あの』お転婆なフローラと交際できているくらいである。

ターセルから帰還後、間もなくシンシア妹妃及び姫たちの歓迎会が開かれた。
あの時も……いろいろと大変だった。
デルマーノがセライナ様の警護を宰相トードレルから秘密裏に命じられていたのだ。
でも、その忙しい合間にも両親に会ったりしてくれた。
――あの時のデルマーノの顔を思い出すと、いまでも口元が緩んでしまう。
格好いいとも可愛いとも違う、なんというか……男らしいのだ。
そのくせ、緊張で強張っているだから可笑しい。でも――本当に嬉しかった。
でも、その後、セライナ陛下を狙うクレディアの暗殺者――本人たちは最期まで自供せず、処刑台へと登っていったが――を捕らえてからが大変だった。
その暗殺者を手早く口を割らせたデルマーノが城を飛び出していってしまったのだ。
口を割らせた方法は……まぁ、それは非人道的なものだったが、結果、もう一人の隠密の居場所を吐かせたのだから、誰も咎めることはできなかっただろう。
だけど……彼を追った私やシュナイツ騎士隊は暗殺者の言う合流地点でもう一人の敵を見つけることができなかった。
デルマーノもだ。
しかし、苛烈極まる戦闘が行われただろう、その凄惨に荒らされた丘に二人がいたのは間違いない。
どちらの死体も痕跡すらも発見できなかったため、そのすぐ側の大河に飲まれたものだと判断した私たちは川を下流へと下り、捜索したのだった。
そして――結論を言えばその日の夕方にデルマーノを見つけることができた。
でも……彼のマントからは女の残り香があったのだ。
〜〜〜〜っ!

ま――まぁ、いい。デルマーノのその敵の女暗殺者を介抱していたときに付いた、という説を信じよう。

その後、色々と面倒な任務を私たち近衛隊も近衛魔導隊も受けたが、今日までなんとかこなしてきた。

中でも最悪だったのはワータナーへのエリーゼ姫、ミルダ姫の護衛だ。
なにが、って言わずもがな、シャーロットの来襲である。
あの任務後、デルマーノは吸血鬼――リッチだったか?――になっちゃうし、近衛局は騒がしくなるし、……デルマーノとは二人きりになれないし、散々だ。

いや。だが、それでも――、

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