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元隷属の大魔導師
官能リレー小説 - ファンタジー系

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元隷属の大魔導師 229

「……ソフィーナさんとデルマーノの関係って――聞いて良い?」

「…………。――だろうな。ソフィーナについて、話さないといけねぇとは思ってた。んなら、今回のウェンディ派遣は実に都合が良いな」

デルマーノはピクンと左手を跳ね、次に酒杯をその手に収めた。
杯の中ほどで波打つ飴色の酒へと潜らせるように視線を投げ入れる。
そして、最後にアリアへと流し目を送るとそう言った。
どこか、さっぱりとした表情だ。
言葉通り、覚悟をしていたのかもしれない。

「……どこまで話した?」

「どこまで……って、ほとんど何も聞いていないわ。デルマーノがいた奴隷街にソフィーナさんが来て、勉強を教えて、奴隷開放直後に、その――ね」

デルマーノが師の娘ソフィーナへとある種の特別な感情を抱いていることは間違いない。
そんな彼へ直接的な言葉を言うのはさすがにはばかれた。
だが、デルマーノは存外にあっさりと続ける。

「ああ、凌辱されたよ。ウェンディのゴミ共にな。そうか、そこまでしか言ってねぇか……だが、大まかにゃそんな感じだ。アリアには不愉快なこたぁかもしれねぇが、俺はソフィーナが好きだった」

「……そう」

アリアは自分でも驚くほど自然にそのことを受け入れることができた。
きっと、今のデルマーノの原点にソフィーナがいることは間違いないからだ。
彼が感情的になるのは奴隷を蔑まれたときでなく、ソフィーナという存在への否定が行われたときなのでは、とも思う。
奴隷の不遇への憤りもやっぱり、ソコが真因だろう。
だから、アリアは極めて穏やかな心情でいられた。

「好き……ってのも、アリアへのとは違ぇ。俺は母も好きだった。四歳のときにおっ死んじまったから、大分、記憶が薄れてんがな?それに近い」

その感覚は分からなくもない。
他人といえど、家族愛に酷似したモノを感じてしまうことはアリアにもあった。
アルマニエ家に仕える侍女長のメイサなどは自分を幼少の頃から知っていることもあり、なんだか第二の母や姉のような気持ちを抱いている。
しかし――デルマーノは当時、幼すぎて『愛』の分類が出来ていたかは疑問だが……。
まぁ、例えどうだろうとアリアの彼への気持ちが変わるものでもない。

「たった二年と少し……そんな短い間だったがな、彼女のお陰で俺ゃ、まだ、まともでいられた。周りからどうかは知らねぇが……」

「平気よ。私もそうだし、ノーク師だってそう――貴方が誰よりもまともなのは知ってるし、信頼しているわ。ヘルシオ君やシャーロットだって懐いているし、近衛局にだって貴方を信じている人はたくさん――じゃなくても、いるわ」

「ヒヒッ……そういや、まだ一年も経ってねぇんだな。この街に来てから……。アリアと出会ってから……」

デルマーノはそう言い、アリアへ笑いかけた。
含むような微笑だったが、実にデルマーノらしい笑みだ。
だから、一瞬、面食らったアリアも朗らかに微笑み返した。

「そうね。春先だったもの……」

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