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元隷属の大魔導師
官能リレー小説 - ファンタジー系

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元隷属の大魔導師 220

「なにって――デルマーノが私たち貴族を許せないでいるってことよ」

「はぁ〜……なに、言ってんだか。いや、でも……やっぱり、初恋はこうでなくっちゃねっ」

「そ、それはどういう――」


――ガッシャァンッッ!


「ッ!」

アリアは悪戯っぽく笑って言われたフローラの台詞の真意を問おうと口を開くが、それはすぐ目の前を横切った影の発した雑音にかき消された。
二人の女騎士はとっさに剣の柄へと手を伸ばしたが、その影は詰まれた樽に突っ込んだ後はピクリとも動こうとはしない。
よくよく観察してみるアリア。
通行人やほろ酔いの野次馬に遠巻きにされて横たわっていたのはシュナイツ王国騎士局の騎士であった。
うつ伏せだったから鎧に刻まれた隊章は見れなかったが、羽織ったマントで所属だけはわかったのだ。
次に彼が飛んできた方へと目を向ける。
一軒の酒場であった。
少し前までは扉であっただろう木片が散乱する出入り口からアリアとフローラは店内を覗いてみる。

「っ?あれって――」

フローラがアリアの肩を叩き、――力加減という概念がないのか、結構、痛かった――店の端を指差した。
アリアは眉間を寄せながらも視線を向ける。

さっき飛んできた男の連れだろう六人の騎士が店の端っこの席に一人座る男を取り囲んでいた。
囲まれた男は黒い髪に陽に灼けた端正な細面、ギラつく瞳を持った宮廷魔導師のマントを羽織る――

「デルマーノッ?」

アリアは思わず叫んでしまったが、この野次馬の群れの中だ、どうやら話題の人物には聞こえなかったようである。
デルマーノを囲んだ騎士の内の一人が進み出ると未だ座ったままの魔導師の襟を掴んだ。

――スタンッ!

しかし、次の瞬間、デルマーノがその騎士の腕を取ると何が起こったのか、騎士は宙を回り、床に伏した。
アリアにはデルマーノがただ、手を添えて押し出しただけにしか見えなかったが……。
呻き声を上げるその騎士の背中へデルマーノは容赦なく右足を振り下ろした。

「あっ、ぁ……あぁああっ!」

右腕を抑えられ、固定された状態で身体を床に押し付けられたのだ、肩間接が完璧に極められ騎士は微動だにできず、苦悶の声を上げるしかない。
デルマーノはつまらなさそうにその自分と大して歳の変わらぬ騎士を一瞥するとテーブルの上の白葡萄酒を手酌で杯に注ぎ入れ、一息で飲み干した。
左手と右足で極めているため、右腕は空いているのだ。

「はっ……弱ェな。まったくもって弱すぎる」

デルマーノは再び、同じ動作を繰り返して空の杯をテーブルに置くと言った。
取り囲む騎士たちはいきり立つが、なにせ仲間が捕らえられいるのだ、下手に動く者はいない。
その姿すら不快なのか、デルマーノは壁に立てかけていた魔導杖(に偽装した戦闘槍)へと手を伸ばすと唐突に間接を極めていた騎士を解放した。
虚を突かれ、俯せの格好のまま、動かないその男の顔面をデルマーノは――まるで、立ち上がるついでかのように――膝で蹴り飛ばした。

「ふぎゅっ?」

ドサァ……

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