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元隷属の大魔導師
官能リレー小説 - ファンタジー系

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元隷属の大魔導師 221

「ああ……ありゃ、鼻が折れちゃったわね」

アリアの耳にフローラのそんな他人事めいた発言が入ってきたが、いまはそんなことを気にしていられる状況ではなかった。
鼻を明後日の方向へ折れ曲げ、酒場の床を鼻血で染め、ノビている騎士を除いた五人の騎士が抜剣したのだ。
野次馬根性で集まった見物人の間から悲鳴が幾つも漏れた。
普通、五対一、しかも騎士と魔導師の近接戦闘では、結果は火を見るより明らかである。

――普通は。

「……や、やっぱり、止めないとっ――」

「へ?なんで?デルマーノ君なら楽勝じゃないの?」

「だからよっ!今日のデルマーノは様子が変で、下手をしたら――」

――バキッ!

「ぐぁっ……」

アリアの台詞を痛声が制した。
見ると一斉に斬りかかった――ということは、相手がただの宮廷魔導師ではなく『悪名高い』デルマーノだと知っているのだろう――騎士の一人がデルマーノの操る杖の石突きに打たれて壁に叩き付けられていた、
しかし、それでは昏倒には至らなかったようでヨロヨロとながら赤髪の騎士は立ち上がる。
だが、その時には他の四名が杖の先に、拳に、蹴りに打ち倒されていた。

「ひっ――ぐぅぁ!」

――メキッ!

騎士は表情を引きつらせたが、時すでに遅く、目前に迫ったデルマーノの正拳を胸に受け、息を詰まらせて崩れた。

「ふんっ……てめぇらから喧嘩売っておいて、これか?どっちがカスだってんだ、おい」

吐き捨てるようにそう言うとデルマーノは騎士たちの服を弄り、貨幣入れを取り出すと丸々、近くにいた店員へと渡した。

「う……ぅぅ……」

その間に息を吹き返した騎士の一人が苦悶の声を漏らした。

……一応、あれでも、手加減はしていたのか。
もし、デルマーノが本気ならば半日は目を覚ますことはなかったはすだ。

「良かったわねぇ、アリア。デルマーノ君が下手をしなくてさ」

「うん……でも、なんか……」

揶揄するようなフローラの台詞にアリアは表情を曇らせる。

――やっぱり、変だ。彼がシュナイツの騎士相手に問題を、しかも、こんな簡単に起こすなんて!

そんなアリアの不安を余所に次々と騎士たちは起き上がってきた。
最後に胸を打たれ、鈍い音を響かせた騎士も息苦しそうながらも覚醒する。

「この、奴隷上がりが……」

騎士たちはデルマーノを睨むがすでに適わないことは悟ったのだろう、敵意はあっても闘志はなかった。
ただ、それでも精神的な優位性を得ようと口に出たのがそんな台詞だ。

――ゴッ!

だが、その罵倒を行った(ある意味で)誇り高い騎士はデルマーノの杖の先で腹部――鳩尾を穿たれ、悶絶することとなった。
デルマーノは酔いの所為ではなく、顔を小刻みに震わせて言う。

「てめぇらは……十五年が経とうとする現在でも、そうなのか?」

「……なに?」

騎士たちは顔を見合わせて、首を傾げる。
しかし、デルマーノはそんなことなど、見えなかったかのように続けた。

「奴隷……奴隷、奴隷、奴隷ッ!ソレがどうしたァッ?」

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