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元隷属の大魔導師
官能リレー小説 - ファンタジー系

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元隷属の大魔導師 204

それは彼の唯一の師にして六大魔導『紫水晶』ノーク・ヘニングスであった。

「……ジジイ、なんでここに?俺への小言が待ちきれなかったのか?」

「うるさい。儂がそのような理屈でアルゴを使ってまで来るわけがなかろう。黙っておれ。おまえへの説教は帰ったら嫌になるくらいしてやる」

アルゴの背から甲板へと降り立った師匠へとデルマーノは歩み寄ると小声で文句を垂れる。
しかし、それを一蹴するとノークはエリーゼの元へと進み出た。

「エリーゼ王女……ミルダ王女も。落ち着いてお聴き下さい。セライナ女王が病臥されました」

「…………え?」

ノークはエリーゼとその背後に立つ妹姫ミルダへ苦悶を浮かべて、告げた。
それは衝撃的な言葉であった。
娘であるエリーゼやミルダだけではない。
この場に集まった近衛騎士も学院の教師も皆、目を見開き、頬を硬直させた。

「そんな……うそ……」

エリーゼは呆然と、唇の間から漏れるように呟いた。
ノークは首を振り、答える。

「いえ。今朝方、王宮内で執務室へと向かう途中に、突然。現在――少なくとも私が出る頃には国中の魔導師、医者、神官や薬草師が手を施しておりました。私の所見では、その……」

「へ、平気よねっ?ちょっと、体調が崩れただけで……すぐに、またっ……頼む、ヘニングス殿……そうだと、言って……」

掴みかかるように問い詰める第一王女をノークはなだめた。
しかし、その背後でデルマーノは密かに舌打ちをする。
エリーゼに比べ、ミルダが動揺はしたものの、慌てふためいていなかったせいだ。
そして、リッチと成り果てた宮廷魔導師だけはこの第二王女の瞳が欲望に暗く輝いたのも目撃していた。

「ご安心を、王女。セライナ女王は過労が祟っただけです。きっと、ご快復なさいます」

「ヘニングス殿――」

「それで、我が師匠がこのようなところまで来たのは、王女を迎えに……ですか?」

デルマーノは慇懃にノークへと訊ねた。
虚を突かれたノークは目を見開いたが、我に帰ると大きく頷いた。

「そうですか……では、私が行きましょう」

デルマーノはスッとマントの襟を引っ張ると『海原を翔るイルカ』号の上方で低空旋回を続ける愛竜アルゴへ手招きした。
邪竜は小さく唸ると後方甲板に横付けする。
甲板の縁に脚をかけ、その邪竜の漆黒の背中に設えた鞍へと飛び乗った。

「……来るのはっ、王女と護衛として近衛隊長さんですかっ?」

声を張って訊ねる宮廷魔導師に間接的な上司である第一王女のエリーゼは逡巡の後にデルマーノに倣い、手すりに脚をのせた。
驚いたのはエーデルを代表とする第一王女付きの近衛騎士だ。

「エ、エリーゼさまっ?」

「何してるのっ、エーデル!早く乗ってっ!」

「は?――は、はい!」

近衛隊長エーデルは女主君の命令に一拍遅れて従った。
エリーゼと同じようににエーデルもデルマーノの手を借り、馬に着けるモノよりも遥かに大きい竜鞍に跨る。
デルマーノは背後にエリーゼとエーデルの気配を確認すると甲板へと冷めた視線を向けた。

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