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元隷属の大魔導師
官能リレー小説 - ファンタジー系

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元隷属の大魔導師 203

デルマーノは立ち上がり、警戒しつつも左手の中指に魔導の発動媒体である指輪が填められていることを確認する。
アリアやシャーロットも同じようにそれぞれ、臨戦態勢をとった。
デルマーノは周囲を目で探り、先ほどの強烈な羽音の発生主を探す。
すると、すぐに見つかった。
水平線が限りなく続く海原には変化がなかったため、船の上空を索敵したのである。
逆光の中、今度はゆっくりと舞い降りるその黒い影にデルマーノとアリアはポカンと口を半開きにさせた。

「わあ、わあっ!どうする、お兄ちゃんっ?ドラゴンだよおっ!」

「いや、大丈夫だ。敵じゃねぇ……少なくとも、俺以外には危機はない」

「へ?」

興奮気味に騒ぐシャーロット。
しかし、それも仕方がなかろう。
いくら真血種と言えど、船上でドラゴンと戦いたくはない。
しかも、体長は船の後方甲板を覆い隠すほどの成竜、さらに種族は邪竜種なのだから、なおさらだ。
だが、そんな幼然の吸血鬼の頭を軽く撫でながらデルマーノは落ち着いた声でなだめた。
疑問符を浮かべるシャーロットにアリアはそっと説明してやる。

「あの邪竜はデルマーノの騎竜なの。だから、大丈夫よ」

「騎竜って、お兄ちゃんのっ?すごい、すごいっ!あはは……おっきいなぁ〜」

目を丸くしてデルマーノとアリアへ視線を巡らし、最後に再び、暗黒竜へと戻したシャーロットは笑い声をあげ、はしゃぐ。

「ええ、ほんとに、まぁ……大きくなったわね。一回の脱皮でこんなになるものなの?」

「ん?ああ……まだ、成竜になってからは初めての脱皮だからこれほどとはな。存外、アルゴは古代竜の血が濃かったのかもしれねぇな」

デルマーノは顎を撫でてそう言うと「ヒヒッ……」と笑った。
古代竜――神代に存在した始祖竜のことか。
全ての人間が神族の血を継いでいるように全ての竜族は古代竜に由来する。
しかしながら、人間の中でも聖人や聖女が稀にしか現れないのと同じように竜族でも古代竜の血を発現する個体は珍しいのだ。

「グゥ……オオォオォォッ!」

邪竜アルゴは喉を震わせた。
それは大好きなデルマーノに久しぶりに会えた歓喜の雄叫びなのだが、船乗りや学生――アルゴの存在を知らない者には極めて恐ろしいものである。
少なくとも自主的に立ち入り禁止にしていた後方甲板へと教師や騎士たちが足を踏み入れる理由となるには充分であった。

「ったく……あんたはあれ?騒ぎを起こさないと生きていられないわけ?」

「デルマーノ隊長っ!これは、一体?」

集まった人だかりの中からシュナイツ王国第一王女エリーゼとその近衛隊長であるエーデルが出てきて、口々にデルマーノへと疑問を発した。

「ああ、すみません。私の竜がお騒がせ――」

「王女っ!エリーゼ王女っ!」

「げっ……」

宮廷魔導師の仮面を付けて答えようとしたデルマーノの声を老人の嗄れた声が割って入った。
デルマーノはアルゴの背に乗ったその声の主を見て、盛大に顔をしかめる。

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