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元隷属の大魔導師
官能リレー小説 - ファンタジー系

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元隷属の大魔導師 193

デルマーノは幼げな真血種の小さな頭をポンポンと軽く叩いて名乗るよう、要求する。
この時、デルマーノは油断していた。
シャーロットやジルにあらかじめ、空気は読むように言ってあったし、アリアとの関係だって了承していると思っていたからだ。
しかし、この元隷属の魔導師は知らなかった。
吸血鬼――特に世間から隔絶された樹海の奥で長年、過ごしていた吸血鬼に一般常識を求めるのは馬に教典を朗読して聞かせ、且つ、追読させるようなものだということを……。

「知ってるだろうけど……私、シャーロット。貴女は……」

「私の名はアリア――アリア・アルマニエ。シュナイツ王国近衛局に所属しているわ」

シャーロットの疑問の視線にアリアは名乗り返した。
にぱっ、と花のように笑うこの真血種に毒気はとっくに抜かれていた。
「そして、こちらが――」と言ったアリアの言葉を受けて、エーデルは口を開いた。

「エーデル・ワイス。第一王女付き近衛隊の隊長です。よろしく」

エーデルは剣を鞘に戻し、柄からも手を離しており、穏やかな口調でニコリと微笑んだ。
シャーロットは微笑み返して「よろしく〜」と答えた。

「あと、こちらが……」

アリアは一瞬、悩んでからウルスラを指し示した。
シャーロットのその大きな瞳の双眸に収められた銀髪のエクソシストはむっつりと表情を固めて言う。

「ウルスラよ。職業は助祭、兼エクソシスト」

「ああ〜……うん、ジルから聞いてるよォ。私、こんなに若いエクソシストを見たのは初めてだよ」

「そ、そう……なの?」

ウルスラは敵愾心むき出しの自己紹介を行ったが、シャーロットは無邪気に返した。
そんな真血種の答えにウルスラは意表を突かれたのか、曖昧な台詞しか出てこなかった。
シャーロットはアリアに向き直る。

「ところで……アリアはデルマーノの彼女なんだよね?」

「かのっ?……デルマーノ、言ったの?」

アリアは見た目相応の単刀直入なシャーロットの問いに頬を赤くさせた。
続いてデルマーノへと恨みがましい視線を送る。

「いや、まぁ……言ったぞ。つーか、言わなくても薄々、感づいていたがな」

「うっ……私達の関係ってなんで、こう広がるのが速いのかしら?」

「ヒヒッ……近衛局では三日で知れ渡ったからな」

デルマーノは再び、喉の奥で笑い声を転がした。
そんな二人の様子を見て、シャーロットはしみじみとして言う。

「ん〜……やっぱり、ラブラブなんだね。うん、大丈夫だよ。私は二番目でも大丈夫なタチだからっ」

「…………」

デルマーノは一瞬、時間が止まったかのように感じられた。
アリアから自分が行使する氷結魔法より遥かに凍てついた視線が注がれているのは察していたが、目を合わす勇気はない。
十秒ほどだろうか、樹海は普段の静寂を取り戻した。
その間、デルマーノは己の見識の甘さをなじる。
曖昧にではなく、きっちりと言って良いことと悪いことを教えておくべきだった。
だが、時間は未来にしか進まない。

「……デルマーノ?」

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