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元隷属の大魔導師
官能リレー小説 - ファンタジー系

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元隷属の大魔導師 185

シャーロットは呆然と呟く。
ジルも言葉が出ないほど驚いていた。
そんな二人の吸血鬼へデルマーノは「イヒッ」と歯を見せて笑うとシャツを脱ぎ、背中を見せる。

「っ?……お兄ちゃん、それ……」

シャーロットはデルマーノの背中を指差し、声を震わせる。
彼の背中に刻まれた十字の古傷がうっすらと光っていたのだ。

「そうだ。俺の背中には聖具が埋め込まれている。特殊な神聖魔法でな。つまり――」

「わ、私が使った……闇の儀式魔法の反転ができる……でも、だってっ……」

シャーロットは首を左右に振って言った。
例え相反する属性の魔法で魔法の術式を変換したとしても、そこから先の魔法のコントロールはできない。
術者によって魔力の挿入方法や術式へのアプローチが違うからだ。
言うならば同じ材料でも料理人によって味付けや盛り付けの仕方が異なるのと同じである。

「イッヒッヒッ……俺はノーク・ヘニングス――紫水晶の門下だぞ?紫水晶は魔力のコントロールだけでいえば大陸最高の魔導師だ」

デルマーノは高笑いをしながらシャツを着直した。
やはり、この古傷を他人に見られるのは嫌なのだろう。

「……最初から狙ってたの?」

シャーロットはデルマーノをにらみながら訊ねた。
もし、最初から隷属化契約の主従の逆転を狙っていたのだとしたら先ほどまでの情事が全てまやかしだったことになるのだ。
デルマーノはそんなシャーロットの視線を見つめ返すと呆れたように肩をすくめた。

「おまえな……根本的に儀式の存在を知らなかった俺がなにを狙うってんだ?ほとんどの魔導師に漏れず、俺だって吸血と同時に魔力を注ぐだけだと思ってたんだぞ?言わなかったか?」

「言ってたけど……」

シャーロットは隷属化するにあたって説明した時のことを思い出した。
どうしたら吸血鬼になるかデルマーノに訊ねると彼は確かにそう答えていた。
そして、その時はシャーロットも儀式のことは詳しく話さず、デルマーノの言葉を肯定した。
だが、そのデルマーノの台詞自体が自分に儀式を行わなせるための演技だったとしたら?
そこまで考えたシャーロットははたと気が付いた。
もし、今の疑問をデルマーノに訊ねたところで彼は事実だったにしろ、そうではなかったにしろ否定するだろう。
つまりは水掛け論――最終的にシャーロットがデルマーノを信じるか否かの問題である。
ならば、答えは決まっている。

「……うん、分かったよ。それだけでも聞けて良かった」

シャーロットが嬉しそうにニコリと微笑んできた。
しかし、デルマーノは彼女の台詞が気に入らない。

「なんだ、そりゃ?死に際の挨拶みてぇに……」

「あははっ……私が隷属化されているんだったら、私の隷属種のジルだってお兄ちゃんには刃向かえないでしょ?だったら、さ」

力無く笑うシャーロットをデルマーノは不快そうな目でにらんだ。

「おいコラ、クソガキ。おまえはアレか?俺がヤった女を手にかけるようなろくでなしだと思ってんのか?」

「えっ?」

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