元隷属の大魔導師 183
「んんっ!…………ふぁ……あははっ、こんなにお兄ちゃんのが……」
シャーロットは瞬間、喪失感に身震いしたが、デルマーノのに続いて溢れ出てきた彼の種子を右手ですくい取ると親指と人差し指でクチュクチュと弄んだ。
ソレの白さには自分の流した破瓜の血や愛液も混じっており、シャーロットは性交の実感がわいてきた。
「んふふっ……それにしてもいっぱい出したね、お兄ちゃん。どうする、これで赤ちゃんができたらァ?」
シャーロットは悪戯っぽくデルマーノへと微笑んだ。
「吸血鬼と人間のクォーターが産まれるな」
「むぅ〜っ……そうじゃなくて、ホラ――責任はとるよ、とかさ。そういう甘いのが欲しかったのっ!」
「イヒッ……そりゃ、残念」
デルマーノは喉の奥で転がすように笑った。
そんな意地の悪い魔導師をシャーロットは唇を尖らせてにらんだが、ふっ、と表情を崩すと真面目な面持ちになる。
身を乗り出してデルマーノの上半身に抱きつくような格好になると彼の頬へ左手をそっと添えた。
「ねぇ……この後、どうするかは分かってるんだよね?」
「ああ、契約の儀式だろ?主従の関係を結ぶ、な」
「うん。抵抗しないんだ?」
試すようなシャーロットの視線をデルマーノは真っ直ぐ、見つめ返すと答える。
「なんだ?抵抗して欲しいのか?」
「そんなわけないじゃんっ!…………ただ、不思議に思っただけ。お兄ちゃんには帰る所も大切な人もいるんでしょ?」
シャーロットは寂しそうに目を伏せて言う。
「ああ。だがな……ここでお前の契約を拒むことは不可能だろ?その後はその後でなんとかするさ……」
「私は……契約の解除の方法なんて知らないし、知ってたとしても絶対に解除はしないよっ」
「はっ……解除なんてしてみろ?今度こそ殺してやる」
そんな目の前の魔導師の台詞にシャーロットは目を大きくさせて驚くと次に涙ぐんだ。
しかし、デルマーノの気味悪そうな視線を受けてシャーロットは弁解する。
「あのね……なんか、嬉しい。私、離れていく人はいても離れないって言われたのは初めてだったから……」
「…………そうか」
「うんっ」
シャーロットは元気よく頷くとデルマーノの首筋に唇を添えた。
そんな主人の様子を見て、儀式の邪魔にならないようジルはベッドから少し離れ、見守る。
シャーロットの唇の間から契約魔術の言語が漏れ始めた。
書物や風聞のため勘違いされがちだが、吸血鬼が生物を隷属化させるには定められた儀式を行わなければならない。
普通に吸血するだけでは吸血鬼のまがいもの――タキシムにしかならない。
そして、タキシムは時が経てば肉は腐り、ゾンビーやスケルトンの類になってしまうのだ。
ゆえに吸血鬼は手元に置いておきたい場合は隷属種に、それ以外はタキシムにする。
そして、もちろんシャーロットがデルマーノに求めるのは隷属化である。
「……ここに誓う。我が名はシャーロット・アングリフ・グレイニル。この者を我が永遠の従者とせよっ」