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元隷属の大魔導師
官能リレー小説 - ファンタジー系

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元隷属の大魔導師 19


「ふむ……城に速文でも出そうかの?姫様が徒歩で入城という訳にもいかんじゃろう…」

「私が先に城へ行き、改めて迎えに来てもよいのですが…」

「いやいや、それよりも儂のゴーレムの方が速い」

ノークは荷物から手の平に乗る程の小さな箱を取り出した。
紐を解き、開けると中から小鳥のゴーレムが現れる。
それは彼が唱えた起動呪文に反応し、目を光らせ、小首を傾げた。

「これは……了解しました。では私が文をしたためましょう」




ディーネ、シュナイツ王宮。
建国から五百年弱、一度も陥落した事のない堅牢な城である。
それはディーネが城塞都市であり、高い石壁に囲まれている事も要因の一つであった。


ディーネの都市部から三重の門を抜け、宮殿へ辿り着いたエリーゼ一行。
何十人もの騎士や女中の慌ただしい歓迎を受け、三人は宮殿の中へ足を踏み入れた。

文官に案内され謁見の間へと通される。

「お母様っ!」

「……エリーゼ、おお…我が愛しい娘よ……本当に無事で良かった…神よ感謝します……」

ヒシッと抱きしめ合うエリーゼ姫と女王セライナ。

「第一王女付き近衛騎士アリア、誠に大義であった」

「はっ、恐れ多き御言葉」

アリアは頭を更に下げ、礼を取る。

「そして、貴公が文にあった『紫水晶』か。我が娘を窮地より救ったそうで。感謝の念が絶えない」

「女王、自らの勿体なき言葉、傷み入ります。しかしそれは儂ではなく、弟子に向けられるべきでしょう」

老魔導師は特有の型で礼をした。

「そうか。ならば弟子共々、褒美を取らそう。してその弟子は何処に?」

「只今、向かって……」

ノークが言葉を紡いでいると騎士が失礼と言い女王の脇に立つ宰相へ、宰相から女王へと何事か伝えられる。

「竜に乗った青年。そちの弟子で間違いないか?」

「「っ!………」」

「え、ええ……間違いないでしょう。儂の弟子です」

ノーク、アリアそしてエリーゼとデルマーノを知る者の間に緊張が走った。
大陸を代表する大魔導師のノークですらシュナイツ女王セライナの前では礼儀を正す。それ程、カルタラ同盟国家群の首長とは高貴な存在なのであった。
そのセライナに対し、『あの』デルマーノが普段の態度を取ろうものなら……
三人は頭の中で、それぞれの最悪のシナリオを描いていたのである。


コツッ、コツッ……


静寂に包まれた謁見の間に徐々に大きくなる靴音が響いていた。


コツッコツッ……コツ!

「偉大なる女王陛下の御視界に入るなど恐れ多き事ながらも失礼いたします。私の名はデルマーノ。『紫水晶』ノーク・ヘニングスの弟子です。家名無き事からも御察しの通り、奴隷出身であります。そのような身分であるが故、大恩ある陛下への謁見、感無量であります」

サッと美しく礼を取り、口上を述べる青年。
声はデルマーノであるが、騎士顔負けの世辞を滔々と告げる様は全くの別人であった。

「なんと、まぁ……感激したのは我の方である。娘を救った上、我にこれ程の礼を取る青年が元隷属の者とは」

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