元隷属の大魔導師 168
「あぁ……この胸筋、んっ……アツくて、逞しくッてぇっ……ふぅ、んん〜……」
ジルは頬擦りの次にうすっらと汗ばんだデルマーノの胸に舌を這わし始めた。
愛撫――というよりは子猫が母猫から授乳を受けるような懸命さと陶酔さが窺える。
「…………むぅ」
シャーロットの呻き声にデルマーノがそちらへと目を向けると真血種の吸血鬼は己の隷属種と獲物の絡みを複雑な表情を浮かべていた。
デルマーノは「だったら――」と口を開いた。
「止めろ。んなカオするんならよ」
「別に、イヤ……じゃないんだけど……」
ほとんど獣のマーキングと大差のない痴態に没頭するジルへと目を向け、頬を紅潮させると続ける。
「……上手く、オトしたなァ〜〜ってね」
「オトした?」
「だって、自分より強い異性に惹かれるのは当然でしょ?だから、ジルはお兄ちゃんのことを初めて会った――あの、ボコボコされた時から好きになっていちゃったんだよ」
「俺には…………そうは見えなかったんだがな?」
デルマーノは先程、再び会った時のジルが己へと送った敵意がふんだんに盛り込まれている視線を思い出した。
ソコに惚れた腫れたなど、含まれていなかった。
「そりゃ、ジルはこんな性格だからねぇ……表には出せなかったんだよ、きっと。でもォ……更に私まで倒しちゃったんだから、口ではなんと言おうとお兄ちゃんにもう、メロメロッ!」
「それにしてはタイムラグがありすぎだな?」
手を組み、それを左頬に当てて感激するシャーロットをデルマーノは半眼で見つめた。
しかし、その間にもジルの上半身と下半身へと同時の、執拗なほどの『ご奉仕』に悶々と眉間に皺を寄せながらである。
「だ、か、らぁ〜〜っ……ジルにはもう一押しが必要だったんだよ。それで、そのもう一押しが――」
「もう一押し、だぁ?」
デルマーノは己へ不敵な笑みを向けるシャーロットの言いたい事が分からす、聞き返した。
「あれ?もしかして無自覚?」
「だから……なにがだ?」
「えぇ〜、さっきのだよォ。散々、強いところを見せつけて屈伏させておいて――でも、最後の抵抗とばかりにグッと身構えた瞬間に一変して優しい言葉をかける。完璧なツンデレだね?いや、ツン……というかズブ?ズブデレ?」
「ズブってなんだ?ズブって……答えなくても分かるがな」
デルマーノは呆れた口調で話すが胸中では得心していた。
しかし、自分の――あの気を利かせたつもりで言った台詞でよもやジルがここまで『堕ちる』とは思わなかったが……。
「んっふぅ……デル、マーノ様のが……膣中で熱くゥっ……てぇ、はぅ……ぁああっ!」
デルマーノの胸部に顔を擦りつけ、たまに愛しそうに乳首や胸筋を舐めるジル。
先ほどまで円を描いていた下半身も今は緩やかだがピストン運動を始めていた。
若い、寝相の悪い女の抱き枕は毎晩こういう気持ちになるのだろうな、とデルマーノは快感に痺れる脳の片隅でふと漏らした。
「ん、んんっ……ちゅっ……は、ぅむ……」