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元隷属の大魔導師
官能リレー小説 - ファンタジー系

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元隷属の大魔導師 156

朦朧とした意識の中、デルマーノの瞳に紫色の天井が映った。
どうやら、自分はベッドに寝かされているようだ。
よく見れば天井だと思ったソレはベッドの天蓋である。
そこまで状況を把握したデルマーノは急激に覚醒した。

「って、オイッ!俺ゃ――っ?」

自分が昨晩、かどうか定かではないが少なくとも自分が意識を失う直前には昨晩だったあの夜に戦った隷属種の侍女エルフから雷撃を受けた事を思い出し、デルマーノは身を起こそうとした。
しかし、動かそうとした両腕がナニかに引っ張られ、起き上がる事ができない。

「ッ?」

――ジャラ、ジャララ

身体の向きすら変えられない為、デルマーノは首だけを動かして腕を引っ張るモノを見てみる。
すると両手首に手枷がはめられていた。
その手枷はベッドの端にデルマーノの腕程もある鎖に繋がれ、固定されており、相当な重量で腕を持ち上げる事すらままならない。
両足も腕と同じように束縛されているのだろう、似たような感触が足首から伝わってきた。
つまり、ベッドの上で大の字になれと強制されていた。

「……ああ、お兄ちゃん。気付いたの?」

デルマーノがあえて無視していた室内の人影が話しかけてきた。
昼か夜かも分からない薄暗い魔導照明に照らされた室内、大きさはさほど広くはない。
少なくとも大貴族の主の寝室よりは広くはなかった。
その部屋に置かれた脚の長い丸テーブル一式に腰掛けたシャーロットがデルマーノを嬉しそうに見つめていた。
一方、そのシャーロットの向かいに座るジルは忌々しそうに視線をデルマーノへと突き刺している。
左手は全快しており、おそらく腹部の傷も治っているのだろうがデルマーノの知る由もなかった。

「おはよっ」

シャーロットは小首を傾げて言う。
デルマーノには本当の少女のように見えた。

「ああ、おはよう……今は何時だ?実はもう何週間も経っちゃいましたっなんてオチは嫌なんだが……」

デルマーノはシャーロットを見つめ返し、落ち着いた声で尋ねる。
密かに体内で魔力を高めてみたが、なんの現象も起きなかった。
左手の指を動かし、中指に嵌めていた魔導媒体である指輪が外されている事を確認すると嘆息する。
そんなデルマーノの心中を知ってかシャーロットは極めて明るい口調で答えた。

「あははっ、大丈〜夫っ!お兄ちゃんが眠ってからまだ、三時間も経ってないからさ」

デルマーノは気付かれないよう安堵する。
自分の体調から予想していた経過時間と合致していたからだ。

「すると……もう、そろそろ陽が昇るな。棺桶に入る前にこの両手両足の拘束を解いてくれると助かる」

デルマーノのその台詞にシャーロットは目を剥き、その拘束する魔導師を見たが、底意地の悪さが窺える笑みを浮かべている事に気付き、唇を尖らせた。

「もうっ、それ偏見だよ。隷属種は太陽にそこまで弱くないし、真血種でも私くらいになれば全然、平気なんだって事……知ってるくせに」

「イッヒッヒッ……そりゃ、残念。――で?なんで俺は生きているんだ?」

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