PiPi's World 投稿小説

元隷属の大魔導師
官能リレー小説 - ファンタジー系

の最初へ
 152
 154
の最後へ

元隷属の大魔導師 154

デルマーノの師、ノーク・ヘニングスの一人娘、ソフィーナは金髪のショートヘアーに垂れ目がちのおっとりとした雰囲気を持ったどちらかと言えばグラマラスな女性であった。
足の下でもがく吸血鬼とは似ても似つかない容姿であったが、それでも戦闘槍を突きつけられたシャーロットはデルマーノにソフィーナと彼女の死を連想させた。
デルマーノは顔を真っ青にさせ、額に脂汗を流す。
瞳孔は感情の高ぶりで開いていた。

「……ぅ…………っ〜〜……」

「……お兄ちゃん、ゴメンね?」

敵を殺す事に躊躇してしまう己に戸惑うデルマーノ。
そんな彼にシャーロットは本当に済まなさそうに呟いた。
デルマーノは意味が分からず、眉を潜めたが次の瞬間、身体中が震える程の衝撃を受けた。

「あっ?……がっ……」

衝撃の着火点は背中からであった。
デルマーノは痺れて言う事を聞かない身体へ鞭を打ち、振り返る。
そこには侍女服を身に纏った金髪のエルフが魔導杖を構え、己を睨んでいた。

「ち、くしょ……」

デルマーノはそれだけ吐き出すように言うと前のめりに崩れる。
しかし、自身の甘さを嘲笑するもシャーロットへトドメを刺さなかった事への後悔は露ほどもなかった。




『デルマーノ……デルマーノ?』

ペチペチと頬を叩かれ、デルマーノはゆっくりと目を開けた。
すぐ目の前に少し、癖っ毛のある金髪を耳に被るようにして切りそろえた二十歳過ぎの端正な顔立ちの女が己の顔を覗き込んでいた。

『……ソフィーナ?』

『こらっ、先生をつけなさい。勉強の時だけでもね……ふふっ』

白く細い腕の先についた指の長い小さな拳で撫でるように小突かれた。
デルマーノは訝しみ、自身の手足を見つめるとそれは見慣れたモノではなく、筋肉の付きもまだまだな少年のモノであった。
ああ、と得心する。
これは夢だ。そして、記憶でもある。
何故なら今、自分がいるのはウェンディにある古びた木造の教会、ソフィーナは修道服に身を包み、周囲を見れば同じ奴隷街出身の子供達がそれぞれ、文字や算術を学んでいたからだ。
いつも自分は周りの子供達より勉学が早く終わってしまい、うたた寝をしてしまう。
するとソフィーナが微笑みかけて、次の問題や文を渡してくれていた。

『ねぇ、デルマーノ。貴方は賢いわ。それにすっごく優しい』

『優しい?こんな人殺しがか?』

これは夢の中の――幼少のデルマーノの返答であった。
ソフィーナは困ったような、寂しそうな笑みを浮かべてデルマーノの頭を優しく撫でた。
反射的には悪態をついてしまうデルマーノだったが、ソフィーナのその表情を見るとすぐさま反省してしまうのだった。

『貴方は優しい。ただ、自分で気が付いていないだけなのよ。そんなに自分を傷つけなくても誰も貴方を責めたりはしないわ』

『…………けっ』

デルマーノは一瞬、呆けたように間をとったがすぐに反抗的な呼気を吐いた。
それが照れ隠しだという事くらい、ソフィーナにはお見通しだったのだろう、にっこりと目を細めて続ける。

SNSでこの小説を紹介

ファンタジー系の他のリレー小説

こちらから小説を探す