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元隷属の大魔導師
官能リレー小説 - ファンタジー系

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元隷属の大魔導師 147

ウルスラが制止しようと足を前に踏み込んだが遅かった。
無詠唱の魔法、『放電』がジルの杖先から迸る。
それは本来、攻撃用魔法であったがこの結界内では人にダメージを与える事は叶わず、それでもジルはありったけの魔力を込めたのだろう、電光はその場にいた者達の視力を数秒間、奪った。
瞳に色彩が戻った時にはすでに侍女服を着たエルフの吸血鬼、ジルの姿はなかった。

「くぅっ!」

してやられたウルスラは相当、悔しかったのか、地団駄を踏み、ジルが逃げ出した時に割れた窓ガラスを睨んだ。

「あの……ウルスラさん?」

「なにっ?」

ギロリと擬音が聞こえそうな鋭い目つきでウルスラは己の名を呼んだアリアへ返事をした。

「あ、あの……これから、どうし――」

「追うに決まってるでしょっ!あんのクソアマ〜……絶対、滅してやるわっ!」

王女とはとても思えない言動で叫ぶウルスラだったが、提案事態はアリアも賛成だった。
もし、追わないと言われたとしてもアリアは単身、追った事だろう。
デルマーノの安否が心配で堪まらないのだ。

「でも、どうやって追うのです?」

「へ?……ああ、言ってなかったかしら?コレを使うのよ」

そう言ってウルスラは修道服の中から正八面錐体の半透明な青色の宝石を取り出した。
手の平大であるその宝石の先端にはウルスラの身の丈、半分程の細い紐が付いている。
ベンギュラムと呼ばれるモノで魔導師が儀式に用いる他、市井の者達は占いなどにも利用していた。

「ベンギュラム?まさか……それで?」

ウルスラの手元でキラキラと光る蒼い宝石を見つめ、エーデルは眉を潜めて呟くように言った。
彼女にとってベンギュラムは学院生時代、友人達と面白半分で行った当たりもしない占いの小道具でしかないのだ。

「心外ね……コレってすっごく使えるのよ?アイツらの頭、真血種がこの宿に来ないのだって判ったし、きっと今頃、デルマーノがその真血種とヤっているだろうけど、それだってベンギュラムで真血種の居場所が判ったからなんだから」

ウルスラはエーデルに対してベンギュラムをかざすと自慢げに言った。
エーデルやアリアは今まで、玩具だと思っていたモノの価値がグッと上がった事に釈然としないものの、そこはウルスラを信じるしかなく、素直に頷くと近衛隊の編成にかかった。

「ふふっ♪真血種すら滅す、元隷属の大魔導師、ねぇ……」

もし、事が上手く運んだとしたら脳裏に映るこのねじ曲がりまくった性根を持つ馴染み深い魔導師はそう呼ばれる事となるだろう。
ウルスラは「くくっ、似合わなさすぎ」と一人、吹き出すと大広間から次々と出て行く近衛騎士たちに混じり、退室した。




吸血鬼の中でも最良種である真血種。
更にその中でも『最恐』と謳われた父を真っ向から滅した自分は最強の吸血鬼だという自負がシャーロット・アングリフ・グレイニルにはあった。
母は人間であり、父に玩具のように扱われ、結果、自分が産まれた訳だがシャーロットには何の感慨もない。

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