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元隷属の大魔導師
官能リレー小説 - ファンタジー系

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元隷属の大魔導師 146

デルマーノを間合いに入れるまでに一秒とかからなかった。

――ヒュッ

ジルと似たような構え――いや、シャーロットがジルへ教えたのであろう、左側を前にして踏み込み、戦斧を振り抜いた。
唯一、ジルと違うのは刃が対象へ垂直に見事、当てられている事である。
助走による加速と戦斧事態の重さ、そしてシャーロット自身の腕力が相まってデルマーノの身体を左腰から右脇腹へかけ、両断した。

「…………でも、私に勝てるわけないよ」

デルマーノの上半身が僅かに傾き、倒れようとするのを見つめ、シャーロットは呟いた。




「ぷっ……くっ、くくくっ……さ、最強……最強ね……」

ワータナー王城ベルトコルタ城下町にある宿。
そこの大広間でウルスラはジルの台詞を聞き、崩れそうになる程、吹き出した。

「な、なにがおかしいっ?」

ウルスラの様子にジルは憤りに似た驚きを覚え、声を大きくして聞き返した。
直ぐ側にいるアリアやエーデルも不審を感じざるを得ない。

「くくっ、だって……最強って言葉を簡単に使うんだもの。いい?強いとか凄いとか――そういうのは生まれやら、種族やらが優良だから付けれる形容詞じゃないのよ」

「……なに?」

含み笑いで語るウルスラをジルは睨みつけた。

「強さってモノはね、才能があって、その百倍も努力して、更にその百倍の執念がある人間がソレを成し終えた時に語る事が許されるのよ」

「…………それが、あの魔導師……デルマーノだと?」

「ふふっ、そう……アイツは強いわよ。ついでに一つ、良い事を教えてあげましょうか?アンタを今、苦しめている結界はデルマーノが創ったモノらしいの。そして、ワータナー諸島王国の王城図書館には『白琥珀』ヨハン・クラウドロットの蔵書がある。更に――智験融合魔導宝玉もあるのよ?」

「智験……?」

自分の発した単語に疑問符を浮かべるアリアやエーデルを一瞥するとウルスラは続けた。

「智験融合魔導宝玉――インヘリット・エクスペリエンス。高位の魔導師が自分の知識や経験を宝石に封じ、ソレへ質問すれば有する答えを返しくれるっていう代物よ。ベルトコルタ城にあるのは白琥珀のモノね」

「……白、琥珀……大陸最高の結界魔導師…………ま、まさかっ?」

ジルは頭の中で幾つもの事象がパズルにピースが嵌るように一つになった。
これほどの結界魔導を生み出した男が六大魔導の知識を学んだ、という事なのだ。
ありえない、と思いながらもジルの頭の隅ではどうしても昨晩、戦った魔導師の勝ち誇った顔がチラついてしまう。

「……くっ」

ジルは魔導杖へと己の魔力を注ぎ、魔導の奇跡を起こそうとした。

「ふんっ……分からない女ね。この結界の中で魔導師はぶっちゃけ、ザコよ?」

「ええ、確かにザコでしょう。しかし、貴女は勘違いをしています。この結界の中で魔導師は戦う事ができないだけで……魔法が行使できない訳ではないのですよっ!」

「へ?……って、ヤバ」

――――カッ!

「「っ?」」

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