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元隷属の大魔導師
官能リレー小説 - ファンタジー系

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元隷属の大魔導師 145

ギィィィ……

「……当たりか?」

デルマーノは窓が無いのか、それともカーテンで仕切られているのだろう暗い室内に視線を巡らすと呟く。
何故、デルマーノがこの扉を開けたかといえば、他の扉との間隔や館の面積から考えてこの部屋は相当な広さだと推測でき、サグレスを餌にするにしても隷属化させるにしても、儀式にはそれなりに広い部屋が必要だと考えたのだ。

――――パッ!

「あん?」

突然、室内に魔導照明が灯り、闇に慣れていたデルマーノの瞳は一瞬、視力を失った。
それでもパニックにならない辺りは流石といえる。
幾度か瞬きをすると魔導照明の光量に馴染んだ瞳が室内の様子を映し出す。
青銅色をした煉瓦大の石が床や壁、天井、そして中央付近に立つ四本の柱にも設えられているだだっ広い部屋であった。
今朝、訪れたベルトコルタ城の謁見室と良い勝負だ。
そんな室内に立てられた四本の柱の中心に金で装飾された玉座が置かれ、そこに人影があった。

「…………ガキ、だと?」

デルマーノは怪訝な表情を浮かべ、その人影を見つめた。
それは十四、五歳だろう少女である。
クリームのように滑らかな質感を持つ白い肌が魔導照明を照り返していた。
髪は蒼天のように澄んだ青色で身の丈の半分ほども長さがある。
細く、長い弧を描く眉の下にはパッチリとした意志の強そうな吊り目、鼻は小さくも形は良く、真紅の唇は風体に見合った少女らしい微笑を浮かべていた。
黒い肩掛けのドレスに入れられた深いスリットからは雪のように白い太ももが覗ける。

「??お兄ちゃんは……だれ?」

デルマーノが予想していたよりも更に高い、よく通る声が紅い唇の間から漏れた。

「……名前はデルマーノ。職業は宮廷魔導師だ。嬢ちゃんは?」

デルマーノは手に持つ魔導杖を模した戦闘槍の鞘を外す。
槍の刃を少女へと向け、構えた。
デルマーノは目前の少女からまだ、魔導を発動すらしていないのに室内を、館中を飲み込むような強大で濃密な魔力を感じていた。

「私?……シャーロット――シャーロット・アングリフ・グレイニル。種族は吸血鬼……」

「グレイニル……か」

「そう、グレイニル泊は私の父。でも、もういないよ?私が殺したんだもん」

真血種の実子にして真血種、シャーロットは立ち上がると玉座の背もたれの裏へと手を回す。

――――ゥォンッ!

室内の固まった空気を斬り割くような風切り音と共に玉座が霧散した。
シャーロットは自分よりも二回りも大きい、柄に黒曜石をあしらえた両刃の戦斧を右腕一本で振り切り、構えた。

「イヒッ……大した腕力だな?だが、モノは大事に使えって教わらなかったのか?親父さんにな」

デルマーノは喉の奥で笑って言った。
シャーロットは面食らったのか、目を見開くと間を置いて答える。

「むっ……凄いお兄ちゃんだ。これを見てもそんな軽口を叩けるなんて――ねっ!」

「ぅお?」

シャーロットは台詞の終わりと共に石の床を蹴った。
腕力だけでなく、脚力も尋常ではないのだろう、目にも止まらぬ速さである。

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