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元隷属の大魔導師
官能リレー小説 - ファンタジー系

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元隷属の大魔導師 140

彼女が探している人物が言わずもがなデルマーノであることをアリアは察する。
ウルスラも理解しているようで犬歯を見せるように笑うと答えた。

「ふふっ……デルマーノをお探し?でもね、アイツはここにはいないわよ。アンタらの親玉のトコに行ったんだから」

「親玉……主の元へ?それは―――ふっ」

吸血エルフは二十代前半の見た目に相応しい笑みで吹き出した。
その態度にムッとなりウルスラはその女吸血鬼を睨むと尋ねる。

「何がおかしいのかしら?」

「判らないのですか?貴方達、下等種が我が主に牙を剥くのですよ?」

ウルスラはその台詞を受け、黙る。
そんな彼女の反応を吸血エルフは畏縮と捉えたのか口端を吊り上げて続けた。

「生物の進化した種、吸血鬼の中でも主は特別です。強大な魔力、屈強な肉体……あの男、死にましたよ?」

「―――くふっ……くくくっ………」

「っ?何がおかしいのですか?」

吸血鬼は先程、自分に投げかけられた問いと同じ質問をしてしまった。
ウルスラは右拳を口元に当てて、続ける。

「ふふっ……確かに人間は吸血鬼より弱いわ。下等種と言われても仕方がない。でもね、人間が自分より下等な獣に負ける事はある」

一拍置くとウルスラは吸血鬼を睨んで続けた。

「それは獣が勝利に貪欲だからよ。人はソレを下等と呼ぶんだけど……そして、デルマーノより勝利に貪欲な人間はいないわ。だから、アイツは下等で――だから、アイツは真血種にだって勝てる」

そう言うとウルスラはスッと巡礼杖の先に付けられた聖具を吸血エルフへと向けた。

「…………ふっ。それは下等故の妄想です。私が打ち破って差し上げます」

吸血鬼は服の袖から魔導媒体となる杖を取り出し、ウルスラと対面する。
二人の臨戦態勢を合図に他の人影達もフード付きの外套を脱いだ。

長剣を持った人間が二人、戦斧を持ったドワーフが一人、戦闘槍を持ったエルフが一人。
種族こそ違うが皆、若い女性で目に精気が無かった。
そんな四体の吸血鬼を眺め、ウルスラは揶揄するように魔導杖を持った吸血エルフへと尋ねる。

「あら?お仲間は元気が無いようだけど?」

「彼らは隷属種の中でも下級種ですから――いえ、正確に言えば私の方が隷属種のイレギュラーです。個の意思を残したまま隷属種になったのですからね」

「ご解説、ありがと。どうりでアンタが吸血鬼っぽくないわけだわ。しゃべり過ぎだもの」

ウルスラにからかうような口調で言われた吸血鬼は目を大きく開くと上と下の唇を強く合わせ、こすりつけた。

「くくっ……あらあら、また吸血鬼に見えなくなったわ。それじゃ、ついでに名前を教えてもらえない?」

「……名前、ですか?」

ウルスラを刺すように睨みつけていた吸血エルフは質問の意図が分からず、聞き返した。

「そ。アンタくらい人間味があるんだったら滅した後に墓でも造ってあげようかな、ってね。墓には名前を彫らなきゃいけないのよ」

「…………その呆れる程の傲慢に敬意を評して答えましょう」

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