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元隷属の大魔導師
官能リレー小説 - ファンタジー系

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元隷属の大魔導師 141

彼女は精一杯の皮肉を込めて微笑むと名乗った。

「私の名はジル・ベルチュラ・アンドラモル。クエルトラ大森林のチス族だった吸血鬼隷属種です。貴女のお名前も伺えますか?殺したエクソシストの名くらい知っておきたいのでね」

そう言い、エルフの吸血鬼ジルは仕返しとばかりに口角を歪める。

「あらら、一本取られたわね。いいわ――私の名前はウルスラ。フルネームを言う気はないんだけど……満足して頂けたかしら?」

「ええ。十分です」

ジルは目を細めて笑うと杖をウルスラへと向けて、呪文を唱え始めた。
しかし、直ぐに違和感を覚え、呪文を唱える口を閉じると困惑の表情を浮かべる。

「……、……、……、……魔力の減りが……この消失感は、一体?」

「あら、なに?いつもより魔法の使用魔力が多いの?それは困っちゃうわよねぇ〜〜」

ジルはハッとなり、ウルスラへと視線を向けた。

「くふふっ……言っとくけど私の仕業じゃないわよ?確かにここにデルマーノはいないけど……アイツが残したモノがあるのよ」

「残した、モノ?………猪口才なっ!」

ジルは燃費の悪い魔法戦闘を瞬時に諦め、腰の長剣を抜いた。

「――はぁっ!」

ジルは悟った。
何故、このウルスラと名乗るエクソシストが自分達、吸血鬼を目の前にして長々と大して意味のない話しをし続けたのかを。
大広間――いや、この館中に漂う濃厚な呪力を発する結界、それを発動させる為に時間が必要だったのだ。
ならば、とジルは目の前のエクソシストへと一息で距離を縮め、呼気と共に長剣を振り下ろした。
吸血鬼の怪力で放たれる一閃、このエクソシストの細腕では防ぎきれないだろう。

ヒュッ……キンッ!

「っ?」

ジルは目を見開く。
ウルスラの前に風のように現れた影に己の剣が防がれたのだ。
防がれた、と言っても受け止められた訳ではなく、相手に剣先を上手く使われていなされたのだが、攻撃に失敗した事に変わりはない。
床を陥没させ、めり込んだ長剣を力ずくで引き抜き、五歩ほど距離を取るとジルはその使い手へ視線を向けた。

「……貴女は…………ああ。昨晩、あの男と一緒にいた方ですね……」

自身へ上段刺突の構えで剣を向ける赤毛の女騎士に見覚えがあったジルは思考を巡らし、すぐに思い至った。
昨晩、己を完膚なきまでに叩き潰した魔導師と共にいた女だ。
ルビーのような長髪、象牙のような肌に整った顔立ち。
見目麗しいその女騎士を強い人間の男に侍る美女の類だと思っていたジルは己の考えを訂正する。
昨日の戦闘でデルマーノは標的の少年よりも寧ろ、彼女を庇って戦っていた節があった。
あれ程の男が側にいる事を、守る事を選んだ女がか弱い女であるはずがなかったのだ。

「…………」

「私が相手だ。ウルスラさんはあちらへ」

警戒心を強めたジルに右足を引いた半身で相対すアリアはウルスラへ言葉だけで広間中で始まった戦闘へ向かうよう、言った。
隷属種と言えども吸血鬼。
エーデル、メルシーら隊長達を除けば押され気味だった。

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