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元隷属の大魔導師
官能リレー小説 - ファンタジー系

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元隷属の大魔導師 116


「………君の元手はいくらです?」

「ぎ、銀貨五枚ですっ!」

デルマーノに問われ、背後で次第を見守っていた少年はドモリながらも答える。
デルマーノは頷くと銀貨の山から五枚だけ取り出すと少年に渡した。
少年は受け取ると財布にあたふたと入れる。

「………早くお帰りなさい。先生方には秘密にしておきますから、ね?」

「………お、お世話に…なりましたっ!」

少年は取り巻きの少女達を促し、店の外へと駆けていった。

「…………ちっ」

少年達が出て行った扉を見て、デルマーノがした舌打ちをアリアは聞き逃さなかった。
これで五件目。また、ハズレである。
しかも、生徒達は遭う度、遭う度、何かしら問題を抱えており、見逃す訳にもいかないのだ。
最近、優しくなったのかデルマーノは今回の賭博の件も含め、逐一、それらを解決していった。
正直、アリアでも堪忍袋の尾はギリギリなのだ。
デルマーノはよく、耐えていると思う。

「………ほ、ほら…デルマーノ。リラックス、リラックスッ。お菓子よ?」

アリアは少しでも彼の怒りの抑圧によるムカつきを和らげようと焼き菓子を渡そうとした。
デルマーノも憮然としながらもそれを口に運ぼうとする。

「て、てめぇらっ!なぁに、のほほんてぇしてんだぁ?」

しかし、デルマーノの糖分摂取は濁った怒声に遮られた。
見ると先程のディーラーである。
背後には店の用心棒なのであろう屈強な男達が立っていた。

「店ぇ、荒らした落とし前はきっちりと着けさせてもらうぜっ!貴族様ょぉっ!」

デルマーノはスッ、とアリアの前に移動し、彼女を背後に庇った。

「…………はぁ」

「やんのかよっ?優男がぁっ!」

「ちっ………ギャーギャー、うっせぇなぁ……」

「………は?」

臨戦態勢を取ったデルマーノに悪態を吐くディーラー。
しかし、先程までの慇懃な態度とは真逆のソレを取るデルマーノに呆けた声を出した。

「こっちゃ……ガキ共のバカ騒ぎを淡々と我慢しながら納めてんだ。んが、もうそろそろ限界なんでなぁ………悪りぃが、八つ当たりさせてもらうぞ?」

デルマーノは魔導杖に偽装した戦闘槍を構える。
鞘を取らない辺りはまだ、冷静なのだろう。

「………アリア」

「嫌よ」

「……んぁ?」

名前を呼んだだけにも関わらず、即答で否定され、デルマーノは警戒をしながらも振り向く。
そこには小さく、頬を膨らました愛しき女の顔があった。

「下がっていろって言うんでしょ?」

「………ああ、当たり前……」

「だから、嫌よ。私だって、戦えるわ。デルマーノの足手まといにはなりたくない」

「………アリア…………ったく、しょうがねぇ。好きにしろよ……ただ、」

「殺すな、でしょ?勿論っ」

「イヒッ!」

デルマーノは歯を見せ、小さく笑うと手に持った焼き菓子をアリアの口に押し込んだ。

「むぅ……ぐぅ………」

「イッヒッヒッ……んじゃ、いくかぁっ!」

デルマーノの叫びに賭博場の男達は身構えるが、先頭に立った男は虚しくも、槍の先端に吹っ飛ばされた。

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