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元隷属の大魔導師
官能リレー小説 - ファンタジー系

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元隷属の大魔導師 115

それでも少年達は地獄に仏と退散しようとする。

「……おい…ちょっと待ちなっ!」

目の前の銀貨を財布に詰めようとしていた少年は怒声にビクッ、と痙攣した。
声の元を見ると自分の相手をしていたディーラーである。
しかし、先程までの柔和な表情とは打って変わり、十代半ばの少年を恐れさせるには十分の凄みを発していた。

「ひっ……」

「保護者が来たからってなぁ……ハイそうですか、と勝ち逃げされる訳にゃ行かねぇんだよっ!」

少年が悲鳴を上げたことに気を良くしたのか、更に声を張り上げディーラーは怒鳴る。

「………座りな、坊ちゃん」

「……へ?………ぇ…?」

少年は怯え、困惑しながらディーラーとデルマーノを交互に見た。
デルマーノはまたも、仕方なさそうに溜め息を吐くと、少年の座っていた席に着く。

「………ぁあ?」

「本当は……自己責任と言いたいんですがね。近衛隊の手前、そういう訳にはいかないんですよ?」

「……あんたが代わりにやるのか?ええっ、優男?」

「はい。さらに………こちらも……」

ニコニコ、とデルマーノは腰袋から金貨を三枚、机の上へと置いた。
よくやるわ、とアリアは三歩後ろから見守る。
どんなに腹を立てようが、彼は絶対にその『宮廷魔導師』の仮面を崩すことはない。

「…………手がデケェ方が勝ち、でいいか?」

「ええ……」

ディーラーはデルマーノの返事にニヤリ、と笑うと札を目にも止まらぬ速さで切った。
そして、シャッシャッ……とデルマーノと自分の前に五枚、札を配る。
伏せられた札をジッ、と見つめるデルマーノにディーラーは声を掛けた。

「一発勝負だ。構わねぇよなぁ?」

「はい……ただ………」


「?……っ!」

ディーラーはデルマーノの行動に目を見開く。
自分と相手の五枚の札を全て、入れ換えたのだ。

「ちょっ、ちょっと待てっ!」

「………?……なんでしょう?」

「てめぇ……何してんだ、コラァッ!」

「何って……そちらの方が手が良さそうだったので………問題でも?」

「大有りだっ!」

「何故です?札を捲らない限りどちらも勝率は一緒ですよ?………ああっ…もしや、イカサマでもしたので?」

「ぐっ………し、してねぇよっ!」

「なら………」

デルマーノはそう言うとディーラーから奪った札を表にした。

「おおっ……これは凄い。五色の竜ですね………」

背後から見ていたアリアや少年達、そして店の客から感嘆の吐息が漏れる。
五色の竜とはこのゲームで最も高い点数の役なのだ。
デルマーノは未だ、慇懃な態度を崩さず、ディーラーを見つめた。

「………そちらは、どうです?」

「……ぅっ………く、そぉ…」

ディーラーは苦々しげに札を捲る。
出たのは黄色の星、月、妖精、天使、竜。
五色の竜程ではないが、高位の役だった。

「ふぅ〜……危なかったですね。まぁ、こちらも札を入れ替えた訳ですし……引き分けって事で………」

デルマーノは人当たりの良い笑顔で金貨をしまう。

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