元隷属の大魔導師 113
一本だけではない。
太いモノや細いモノ、合わせて八本の光が街へと向かって伸びていた。
「………これは?」
「『探索』の魔術だ。生命体は探せねぇんだが、使い勝手がいい。俺が今、探索したのは学院のバッチだ」
「……それって金色の校章が書いている?」
「ああ。もしサグレスを最後に見たのが俺達だったとするとマントじゃ意味ねぇ。恐らく奴は水着だったからな。だが………」
「学院の生徒達は水着の時でも校章を着けていた。それで……」
「そうだ。んで、この一番太ぇのが宿。細いのが少人数で行動してる奴だな」
「………なるほど…ね……」
本数から察するにサグレスを含め、七組の生徒達が外出しているようだ。
勿論、外国での夜間の外出など学院は認めていない。
「これ以上は……俺ゃ無理だな。この魔導の欠点は鮮明に思い描かないと探知できねぇってとこなんだが………」
「サグレス様について思い出せる事…かぁ……」
良い意味でも悪い意味でも目立つ生徒である。
アリアもデルマーノも印象が薄い訳ではない。
しかし、いざ、思い出せと言われると中々、困難であった。
「私も、無理……仕方ないわ。一つ一つ、当たっていきましょう?」
「……ああ」
デルマーノは頷くと街へと来た道を小走りで駆け出す。
アリアもその後を追い、強く地を蹴った。
バンッ!
「んっ………あぅ…っ?」
大通りに面したとある宿屋の一室に踏み込んだデルマーノとアリア。
中で産まれたままの姿で絡みあっていた少年と少女は乱暴に蹴り開かれた扉の音に驚き、固まる。
デルマーノの後ろから室内を覗いたアリアは籠もった性の匂いに咽せ、赤面した。
少年も少女も学院の生徒だ。
「…………なにを、やっているんですか?」
デルマーノが宮廷魔導師モードで話しかける。
「あ、あの……えっと………」
しどろもどろ、と狼狽える少年にデルマーノは諭すように続けた。
「………異性間の関係を否定はしませんが……今、自由時間ではない、ですよね?」
「す……すみません………」
官能に火照った顔から一転、血の気の失せた表情で頭を下げる少年。
少女はしばらく、呆けていたがデルマーノの存在に慌てて、服を着始めた。
デルマーノは仕方ない、という風に頭を掻くと口を開く。
「はぁ〜……今回だけは見逃します。三十分以内に宿へ戻るんですよ?」
「「………は、はいっ!」」
デルマーノの言葉に不純異性交遊の現場を押さえられ、絶望に青くした顔を見つめ合った生徒達は喜び、大きく頷いた。
「今度、見つけたら………先生方に言いつけますからね」
「はいっ。すみませんでしたっ!」
服を急いで着る少年の返事に満足そうに頷くとデルマーノはアリアの肩を軽く叩き、部屋の外へと出た。
パタン………
「…………これで三件目。またハズレね?」
「……………」
「?………デルマ…っ!」
返事がない事を訝しんだアリアはデルマーノの顔を覗き込む。
瞬間、アリアは彼の表情を見て凍り付いた。