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元隷属の大魔導師
官能リレー小説 - ファンタジー系

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元隷属の大魔導師 111

常に相手の言う事を想定して会話をするデルマーノがこのように面食らった表情を見せるのは珍しい。
アリアですら片手で数えられる程度だ。
しばらくの間、動揺を隠しきれず固まっていたデルマーノは急にくっくっ、と喉の奥で笑いを漏らした。

「ヒッヒッヒッ………アリア。思い出したよ」

「?……な、何が?」

「俺が、お前に惹かれた理由だっ!イッヒッヒッヒッ!」

「っきゃっ!」

デルマーノは辺り気にせず、大声で笑うと己の肩にかけられていたアリアの腕ごと、がばっ、と彼女をその逞しい腕で抱きしめた。
彼のその突然の行動に驚き、悲鳴を上げたアリアだったが、力強く、しかし壊れ物を扱うかのように優しく身体を包み込まれる感覚が心地良く、ウットリと身体から力を抜いた。
それは数秒程度の事だったのだろうが、アリアには遥かに長く感じられた。
しかし、当然ながら終わりは訪れ、フッ、と圧力が消え、身体が自由になる。

「ぁ……ぅ………」

アリアは寂しげに小さく、抗議の声を発した。
デルマーノはそんなアリアの態度に心をくすぐられ、イヒッ、と彼女の頭を優しく撫でる。

「………俺は、ガキの頃に…んま、いろいろあってな」

デルマーノはゆったりと歩き始めると、夜空に煌めく星々を見上げながらポツリ、と漏らした。
アリアは無言でデルマーノに寄り添い、歩く。

「…貴族も騎士も大っ嫌いだった。憎んでたって言ってもいい。勿論、それは生まれからくる妬み嫉みだ。だってよ………奴隷闘士…しかもまだ成長しきってもいねぇ、少年闘士の闘技を見る奴らなんざ身分の高ぇ、金持ちの変態だけ、だかんな。なんで俺がこんな奴らのために、ってなる訳よ」

アリアは沈黙を保ったまま、ギュッとデルマーノの袖を強く握った。
シュナイツにも奴隷闘技場はあったのだ。
デルマーノに、奴隷闘士出身の者達に憎しみの種を蒔いた人間が未だにシュナイツ王宮でマントを当然のように着けている。

「んで……奴隷制が廃止されて、ジジイの弟子になって、魔導の勉強に励んで………それでもっ、この腕の焼き印のように俺ん中の奴らへの憎悪の炎は消えることはなかったっ!」

そう空に向かい叫ぶと、ふぅ…とデルマーノは息を吐いた。

「アリア………お前と巡り会ったあの日、俺ゃ、初めは助ける気なんてなかったんだ。だが、お前が自分を囮にし、男達に剣を抜いた時、気が変わった。コイツを助けよう、ってな」

「……?な、んで?」

アリアはここまでのデルマーノの話しを聞き、もしあの時、彼が自分と姫様を見捨てても文句を言うことはできない、と思っていた。
故にデルマーノが自分達を助けた事が不思議でならないのだ。

「………アリアが…俺の中での騎士、貴族とは違っていたからだ。誇り高く、騎士道を尊ぶ……んな騎士ゃ、本の中にしかいねぇと思っていた。だからよ、アリアを助けた。後はまぁ、流れだな。イッヒッヒッ………それをさっきのアリアの言葉で思い出したんだよ。俺ゃ、シュナイツ騎士のアリア・アルマニエに……惚れたのさ」

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