PiPi's World 投稿小説

元隷属の大魔導師
官能リレー小説 - ファンタジー系

の最初へ
 102
 104
の最後へ

元隷属の大魔導師 104

つまらなさ気に呟くと、デルマーノはガシガシ、と乱暴に己の頭を掻いた。
アリアは彼のその態度をいぶかしむが、直ぐに訳に気が付く。
デルマーノは生まれや、血といったモノに運命を左右される事を嫌っているのだろう。
ズーンッ、と空気が重くなり、居たたまれなくなったアリアは話題を変えた。

「そ、そう言えば………何でこの国の人達は貴族を嫌うの?」

「んぁ?」

あまり大きな声では問えない質問だったため、アリアは小声で尋ねる。
デルマーノも同じ事を思ったのだろう、辺りをチラリと警戒し、口を開いた。

「そうさな……ワータナーにゃ、代々マシな王様がいなかった。だから、国民が端っから好意的だった訳じゃねぇんだが……決定的だっのが前王クロード。奴はまぁ…ダメダメな王だったんだ」

「……ダメ?どんな風に?」

「アリアが想像するバカな王の三倍は酷い。税は有り得ない額まで上げる、気に入った若い娘を無理矢理妾にする、カルタラの王達には喧嘩を売る……悪行を上げればキリがねぇ。だが、さらに質が悪いのはクロードは人心の掌握術にだけは長けていたってことだ。ワータナーの貴族共はクロードの横暴を見てみぬフリをした」

「なぜ?」

「クロードは利益分配が上手かったんだよ。頷くだの木偶が集まっては彼の下賜する領地や異性や金品に群がってた。おかげで諌止したり直言するような人物は居場所を失って失脚したり、やむなく我が子の中からイエスマンになれる者を後継者に選んでさっさと隠居しちまったりしたんだよ。後はクロードのやりたい放題……ってわけだ。」

「酷い王がいたものね」

「さらに始末が悪いのが、クロードの長女で現女王のリーゼだ。黙ってりゃ清楚な美人なんだが、親父譲りの横暴さを持つ上に親父より数段頭がいい」



ギュッ!!


「痛っ!」

デルマーノは何の前触れもなく右足の甲に走った激痛に悲鳴を上げ、慌てて机の下を覗きこんだ。
お気に入りの山羊の皮を二重に張った靴をアリアの履いたシュナイツ騎士に支給される鋼の脚甲が踏みつぶしていた。

「な、何しやがるっ?」

「へぇ〜……清楚な超美人、ねぇ。そう言えば昼に王宮で姫様に従ってリーゼ様に謁見した時………男性陣はみんな、鼻の下を伸ばしてたけど……デルマーノも、なんだ………」

「ぅおいっ!ちょっと、待てって。つーか……俺の話しをちゃんと、聞いてたか?」

ニコニコ、と笑顔を崩さず頷くアリア。
愛しき女のその威圧的な様子はデルマーノの恐怖を更に駆り立てた。

「聞いてたわ。清楚な超美人で頭がいい……」

「いやいや……なんで、そうなるっ?マズい単語だけ抜き出すなよ」

「ふんっ……どーせ、私は清楚じゃないし……頭も良くないわよ………」

アリアはそう言うと頬を膨らまし、そっぽを向く。
デルマーノは、はぁ……と溜め息を吐くと未だに踏まれた足の痛みに耐えながら説得にかかった。

「アリア……」

「………何?」

「安心しろ。俺はお前程、魅力的な女を知らない」

SNSでこの小説を紹介

ファンタジー系の他のリレー小説

こちらから小説を探す