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元隷属の大魔導師
官能リレー小説 - ファンタジー系

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元隷属の大魔導師 11

「姫様の責任ではありません。あの山賊紛いの者達が悪いのです!」

「………」

「それに騎士が主君を護り、死ねるのならば本望でしょう…」

見事な景色を見て緊張が解けてしまい、そこへ騎士達の死という悲しき現実が押し寄せてきたのだろう。次期女王とはいえ、十八の娘が悲観的になるには十分だ。
己の前に座った少女の重みを感じているアリアへ耳鳴りにも似た声が話しかけてきた。

『ヒッヒッヒッ……耳障りな綺麗事だな…なんだかんだ取り繕うが実際、そのガキがいなけりゃ騎士連中も死ななかったんだぜ?』


エリーゼには聞こえていない。前方を飛行するデルマーノからの風属性の魔法であろう。
こちらをチラリと見た彼はアリアにだけ分かる程度に口を歪めた。
確かに彼が言う通り、配下の死の責任を負う事も良き王の資格である。ただ、本人にそれを言えるかは別の問題なのだ。

『それに…お前も薄々、気付いてるんじゃねぇの?……あいつら同盟国家群の正式な剣術の訓練を受けた…どっかの騎士だろ?』

目を見開き驚くアリア。もしやとは思ったが自分の勘違いだろうと忘却するつもりであった。

『どうするよぉ、騎士様?イヒヒッ……』

笑い声を残してデルマーノからの魔法は途絶える。彼はすでに前を向いていた。

(一部貴族の反抗であればまだ、良い。女王様や姫様の護衛を増やせばいいだけなんだからね……だけどもし、奴等の背後に他国が付いていたのだとしたら…私はどうすればいいのよ……)

デルマーノの背中を見て、アリアは悩む。平時なら女王や宰相に報告し、判断を仰げば良い。
だが今は北の大国クレディアが東の国々へ攻め入っているのだ。
外政が穏やかではない同盟国家群。そこへ内政にまで悪戯に波風を起てて良いものだろうか。
その思いが優先し、アリアはエリーゼへ報告する事を躊躇っていた。


アリアの悩みに結論が出る前にノークの家に到着する。彼の家は屋敷ではなく塔と呼んだ方が相応しいだろう。
聳え立つ塔の中ほどにあるバルコニーへノーク、デルマーノ、アルゴの順に着陸した。

「お帰りなさいませ、マスター…」

ドラゴンの背から先に降り、エリーゼを支えようとしていたアリアは声の方向見ると、驚きのあまりエリーゼを落としそうになる。
そこにいたのは一見、少女と見間違える程、精巧に造られたゴーレムであった。
「ゴーレムが、喋ったっ?」

通常、貴族が愛用するゴーレムに会話機能はない。それは魔導師からゴーレムを買ううえで、会話が出来るか否かで値段が天と地程もの差があるからだ。
それどころか、大抵の魔導師は幾ら金を積まれようと会話機能のあるゴーレムを造る事は技能的な問題で出来ない。その為、希少価値が生まれるのだが、高い金を払ってまで話せるゴーレムを買う必要はない、と言うのが一般的な考えだ。

「イヒッ…造型は俺、中身はジジイが造った。良く出来てんだろ、意思まであんだぜ?」

その言葉に二人の客は塔の主を見る。

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