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媚薬体質!?
官能リレー小説 - ファンタジー系

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媚薬体質!? 8

 上機嫌にそう言うと、さっそく兎をバラし始めた。その手馴れた様子に、本当に普段から調理しているのがうかがえる。
 世間では「疾風迅雷、電光石火。目にもとまらぬ神風盗賊!」などと、えらく持てはやされていたので、一体どんな女傑かと想像していたのだが。実際に出会ってみれば、わりと情けない姿ばかり見ている気がする。そこにきての、この妙に生活感のにじみ出ている言動に、彼女の評価は「悪ぶってる田舎娘」に決まったのも、しかたないと思う。
「残念だが、野菜がないから鍋は無理だ。今夜はそいつを炙ったのと、黒パンに番茶だな。」
 そう言って荷物から鉄串を取り出す。一緒に出した鍋に水筒から水を注ぎ、火にかけて沸くのを待つ。水石を新しくしたばかりなので、まだまだ透き通っている。
「あっそ。ま、仕方ないわよねぇ、旅してるんだもの。」
 俺に背を向けたままで、返事をしてくる。その手許ではだいぶくすんだ水石で、血を洗い流している。

 焚き火に視線を移し、しばしボーッとしている。すると頭の中にふと、魔石くずが浮かんでくる。魔法を使う連中いわく、魔力の宿る魔石は触媒として優秀らしい。精霊だ何だという話は知らないが、鉱山では上質なものは滅多にでないらしく、ほとんどがクズでしかないらしい。そんな魔石くずの使い道を考えついた昔の誰かには、感謝してもいいだろう。割れば火種になる火石や、一々水を買う手間を減らしてくれる水石のおかげで、旅がだいぶ楽になったらしいからだ。

 そうして湯が沸くのを待っている間、エリカは鉄串に兎の肉を刺し、焚き火の周りに並べて焼いていった。表面には砕いた胡椒と岩塩を塗し、始めは外側を焼き固めるように火のそばに、色が変われば火から離し、じっくりと肉汁がにじみ出てくるのを待っている。旨みの詰まった肉汁を全体に広げていって、良い焼き色が付いたところで、木の皿へと取り分けていく。
 その時には、沸騰した湯の中に入れた茶葉も開いて、ちょうど飲み頃になっていた。火のそばで温めておいた黒パンと共に、今日の夕食が目の前に並ぶ。
「それじゃあ、世界を渡る大いなる風の神の恵みに感謝して、いただきます!」
「……いただきます。」
 さてまずは、肉からいただこうか。まだ、熱の残る鉄串をつまんで齧りつくと、塩の味が口に広がり、
唾液があふれてくる。胡椒の香りが鼻に抜けると共に、肉汁が口いっぱいにこぼれ出す。しっかりと
噛み締めながら串から抜けば、歯を押し返してくる弾力が楽しませてくれる。そのまま味わっていくと、
兎肉本来のさっぱりとした風味が出てきて、表面の香ばしい歯ごたえと共に、なかなか味わい深い
出来に仕上がっている。
「……旨いなぁ」
 思わず、そんな感想が口から漏れてしまう。
 それを聞いたエリカは胸を張り、その目は一矢報いてやった、と自慢げに語っていた。


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