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聖剣物語
官能リレー小説 - ファンタジー系

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聖剣物語 100

思わず声を荒げるバン。
「チクショウ!そういう事だったのかよ!」
邪神アザトゥスの復活を目論むアザトゥス教団にとって、そのアザトゥスを封印する力を持った聖剣の勇者であるバンは是が非でも始末したい存在だ。こんな事なら降伏なんてしないで戦って切り抜ければ良かった…が、後悔しても後の祭りだ。
しかし、娘の口から再び意外な言葉が出た。
「なに驚いたような大声出してんのよ?あんた達、国か法皇庁の密命を受けて来た間諜(スパイ)でしょう?村人全員アザトゥス教に改宗したこの村の事を調べに来た…」
「な…何だと!?」
どうも自分達は聖剣の勇者一行として捕らえられた訳ではなさそうだ。
アレイダがバンに近寄り耳元で囁いた。
「…敵である事には変わりないが、どうやら向こうも何か勘違いしてるみたいだね…」
続いてアイラも言う。
「あんた、ちょっと詳しく話聞いてみなさいよ…」
「お…おう、分かった…」
バンは娘に尋ねた。
「なぁ、どうしてこの村の連中は揃ってアザトゥス教なんかになったんだ?アザトゥスって何なのか知ってて改宗したのか?」
「もちろん。アザトゥス様はこの穢れ多き世界を浄化し、この地上に楽園を創造するため、いずれ間も無く天より遣わされる救世神よ。その新たな世界の担い手となる人々はアザトゥス様の正しき教えに従った者達だけなの。アザトゥス様の教えを理解しない愚かな人間達は旧世界と一緒に滅びるのよ…あ、もちろん今からでも悔い改めてアザトゥス教に改宗すれば話は別よ」
世界を滅ぼす破壊の邪神アザトゥスだが、当のアザトゥス教の信徒達の間ではそういう解釈がなされているようだ。シスカは半ば呆れ顔で呟いた。
「何とまぁ…古典的な終末思想と選民意識の取り合わせ…」
バンも言う。
「ほ〜んと…今どき新興宗教だってもう少しヒネった設定掲げてるぜ。お前らそんなベタな作り話信じてアザトゥス教に改宗したのか?よっぽど鬱屈した人生送ってたか、でなけりゃ村人全員アホの集団だな」
「あ…あんた達に何が解るって言うの!?法皇庁か国か知らないけど、私達を見捨てたあんた達にそんな事言われる筋合いなんて無い!」
娘は急に凄い剣幕で怒り出す。どうやら単にアザトゥス教団の教義に共感したからというだけではなく、何か他にも理由があるようだ…。バンは聞いた。
「み…見捨てたって…一体どういう事だよ?」
娘は話し始めた。
「何だ…あんた達、密偵のクセに何も知らないの?この村はね、国からも教会からも見捨てられたのよ…」

…娘の話によると今から約一年ほど前、他国から流れて来た盗賊の一団がこの村に住み着いてしまったのだという。彼らは街道沿いにあるこの村を拠点に、通りかかる旅人や隊商を次々に襲っていった。
だが、かなり大規模な盗賊団だったので、この国の軍もヘタに手出しが出来ず、結果的に盗賊行為を黙認する形になってしまった(盗賊団は他の村は襲わなかった。そうすれば国が本気になる事を解っていたからだ)。
盗賊達は根城にしたこの村で乱暴狼藉の限りを尽くした。金品・食料の強奪、若い女達への暴行は当たり前…時には面白半分で村人をリンチにし、酷い場合は殺したりもした。村人達は盗賊達のご機嫌を伺いながら、彼らの気紛れに脅えて日々を生きていた。
もちろん村人達だって何もしなかった訳ではない。密かに王都へ密使を送り、国や教会へ盗賊の討伐を要請した。だが彼らの反応は冷たかった。それどころか彼らは盗賊に占拠された村を無い物として扱うようになり、その村名は地図から削除された。切り捨てられたのだ。あたかも腐った枝を木の幹から切り落とすが如く…。
もう村人達には一片の希望も無いかのように思われた。ところが救い主は意外な所から現れた。それは今から約半年ほど前、たまたま盗賊達の留守中に村に立ち寄った一人の旅の神官だった。村人達から村の現状を聞いた彼は、自分が“アザトゥス教団”という法皇庁からは認められていない隠れ宗派の神官である事を明かした上で、教団の実戦部隊を率いて村を救いに戻って来る事を約束して村を去った。
それから僅か一週間後、一国の正規軍にも匹敵する兵力と装備を誇る大軍が村に向かって進撃して来た。それを知った盗賊団は蓄えていた宝物も何もかも打ち捨てて一目散に逃走していった。それはアザトゥス教団の軍だった。村はアザトゥス教団によって救われたのだ…。

「…その軍を率いて来てくださったのが、最初に村を訪れたアザトゥス教の神官ファルカーク司教様だったの。ファルカーク様はアザトゥス教団軍の司令官の一人でもあらせられる立派なお方なのよ…」
娘は恋い焦がれるようなウットリとした表情で言った。バンはアザトゥス教団の規模に驚いていた。
「まさか独自の軍隊まで持ってやがるとはな…しかし、してみるとアザトゥス教団も単なる悪党集団って訳じゃねぇみてぇだなぁ…」
そんなバンにアイラが小声で突っ込む。
「感心してんじゃないわよ。どんな善行を働こうが最終的には世界の破滅を願ってる集団なんだから」
一方、メリサリムはバンに変わって娘に質問し始めた。
「…で、そのファルカーク司教という方がアザトゥス教団の最高責任者でいらっしゃるんですか?」
「とんでもない。ファルカーク様は司教様よ。司教様は確かに私達一般信徒なんて足元にも及ばない尊い存在だけど、全教団内に300人は居られるわ。その司教様の上に居らっしゃるのが大司教様で、これはグッと減って40〜50人前後といった所、その更に上に全アザトゥス教団を統べる総司教様が君臨されているのよ」
「かなり大規模な組織なんですねぇ…」

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