PiPi's World 投稿小説

聖剣物語
官能リレー小説 - ファンタジー系

の最初へ
 96
 98
の最後へ

聖剣物語 98

「ハァ…一体どうしたというんじゃ?最近そなた様子がおかしいぞ。勤務中にボーっとしておる事も多いし、それにその目の下の隈(くま)…最近よく寝ておらぬのではないか?」
「はあ…まあ…」
「何か悩み事でもあるのかね?ワシで良ければ相談に乗ってやっても良いぞ?ん?」
あんたの娘が私の兄を殺そうとしてるんですよ…なんて言える訳が無い。
押し黙るヘーデンに国王は言った。
「何じゃ…主君であるワシにも言えぬ悩みなのか?」
「申し訳ございません陛下…ですがご安心ください。あくまで私事です。私の陛下への忠誠に二心はございませんので…」
「構わん構わん。若い頃は人に言えぬ悩みの一つ二つあって当然じゃ。ただ、もし誰かに相談したくなった時にはダレル卿を頼る事をお勧めしよう」
「大蔵卿閣下を…?」
ヘーデンは眉をしかめた。
取り立ててくれた事に感謝こそしていたが、実際に対面して言葉を交わしてみた所、ヘーデンはあまり大蔵卿が好きにはなれなかったからだ。
だが王は言う。
「左様、ダレル卿は非常に聞き上手でな…もちろんただ聞くだけではない。適切な助言もくれる。それに何と言っても口が堅い。あれは本当に信用出来る男じゃ。悩み事はダレル卿に相談するのが一番じゃよ。それに卿はそなたの事をいたく心配しておったぞ。そなたを近衛剣士隊に推薦したのも卿であったしのう…。悪い事は言わぬ。一度で良いから卿にそなたの悩みを聞いてもらってはどうじゃ?」
国王はダレルの事を非常に信頼しているようだ。
ヘーデンも自分の事を気にかけてくれていると聞けば悪い気はしない。
「閣下が僕の事を……分かりました。近い内に大蔵卿閣下に相談してみます」
「うむ、そうするが良い」

ヘーデンにとっては幸運な事に、その機会は意外にも早く訪れた。
数日後、王宮の廊下で大蔵卿の方から声を掛けて来たのだった。
「やあ、ヘーデン君。久しぶりだね」
「あ!閣下…」
ダレルはヘーデンの顔を見て、顎に手を当てて言う。
「ふむ…確かに少しやつれたようだ。顔色も良くない…あぁ、失礼。話は陛下から聞いているよ。もし良かったら今日の下城後にでも私の家に来ないかい?」
「え…!?よろしいのですか?」
「もちろん。先日の非礼の詫びも兼ねてね」
そう言うとダレルはニッコリと気さくに微笑んで見せた。
彼は国家の財務を司る要職…本来ならば一衛士に過ぎないヘーデンの方が非礼を咎められるべき所だ。
(何て謙虚な人なんだろう…僕は恥ずかしい。第一印象だけで人を判断していた…)
ヘーデンはただひたすらダレルに頭の下がる思いだった。
「わかりました。ではお言葉に甘えて、今夜閣下のお屋敷にお伺いしてよろしいですか?」
「あぁ、ぜひ来てくれたまえ」
そう言うとダレルはヘーデンの肩にポンと手を置いた。
その時だった。
ダレルの服の袖口から何やら金色の腕輪のような物が一瞬だけ見えた。
「…?」
ヘーデンは妙な違和感を覚える。
パラム王国では男性が装飾品としての腕輪をする習慣というのは無い。
(閣下の故国の風習だろうか…蛇の意匠なんて珍しいな…)
その腕輪は蛇が前の蛇の尻尾を飲み込んで環状に複数匹連なった、いわゆるウロボロスと呼ばれるデザインをしていた。
蛇の瞳の部分には赤い宝石がはめ込まれており、それが何とも言えない不吉な光を放っていた……。


へーデンがダレル大蔵卿に悩みを打ち明けている頃、我等が勇者バン・バッカーズはというと。
ゼノン帝国の中心地『帝都アウレア・ノヴァ』を目指すバン一行は日が暮れたので、とある町の宿に泊まっていた。

「つまり、ゼノン帝国にとってカシウスは宝物ってことなんだな」
「はい、勇者様その通りです」
昼間、ゼノン帝国から聖剣を借りるのが難しいのを理解できずバンはアイラから猿山の猿と馬鹿にされた理由をメリサリムとシスカから聞いていた。
ゼノン帝国は聖剣カシウスの勇者にして初代皇帝『ディオン・オブ・イヴラート・レニ一世』が築いた国であり、かつては西方大陸全域を支配していた国であった。
その為、『聖剣カシウス』はゼノン皇家イヴラート王朝にとって伝家の宝刀なのである。

SNSでこの小説を紹介

ファンタジー系の他のリレー小説

こちらから小説を探す