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聖剣物語
官能リレー小説 - ファンタジー系

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聖剣物語 97

バン・バッカーズを仕留めてないと聞き不機嫌なロザリーは宝石商に扮した暗殺組織の仲介人を怒鳴りつける。
「結局バンは殺せなかったのね…」
「まあまあ、落ち着いてください!ロッロザリー姫!」
「えっ………(兄さんを殺す…どういう事だ!)」
バンを殺す相談をするロザリーと宝石商のやり取りにへーデンは思わず声を出しそうになるが、何とか思いとどまった。
「落ち着け!私を誰だと思ってるのよ!」
「そう申しましても、相手は聖剣の勇者。始末すると騒ぎが大きいですからね〜もし、首謀者が姫様と知られたら厄介ですよ〜」
「クッ………(こいつ、人の足元をみていい気になりやがって・・・)」
怒れるロザリーに対して仲介人は涼しい顔で聖剣の勇者を暗殺の難しさを語り、下手をすればロザリーにも累が及ぶことを説明する。
暗殺が失敗して王女の立場を失い処刑される事態を恐れるロザリーは腸が煮えくり返りながらも言い返せなかった。
そんなロザリーに対して宝石商は言う。
「…まあ、我々も暗殺者集団としての矜持がございます。ご安心ください。前金をいただいたからには必ずや仕事はやり遂げてご覧に入れましょう」
「当たり前よ!それで?具体的にはどうするの?」
「現在放っている刺客に加えて新たな刺客を複数投入いたします」
「腕は確かなんでしょうね?」
「それはもう…我が組織でも一二を争う手練れでございます」

一方、ヘーデンは大急ぎで玄関へと向かっていた。
(し…信じられない!まさかロザリー義姉様が兄さんを殺そうとしていたなんて…何故だ!?義姉様と兄さんは愛し合っていたのではなかったのか!?訳が解らない!)
「あら?ヘーデン様、いかがなさいました?」
「うわあぁぁっ!!?」
半ば混乱状態だったヘーデンは廊下を曲がった所でメイドと出くわし、驚いて大声を上げてしまった。
「…あ…あの…大丈夫ですか…?」
「え!?…あぁ、だ…大丈夫です!何も聞いてませんから!」
「は…?」
「あ…いや、こっちの話…失礼いたします!」
「あ!お待ちください!」
ヘーデンは半ば逃げるように屋敷を出て行った。

宝石商との密談を終えたロザリーはメイドから事の次第を聞いた。
「…それで、ヘーデンは大慌てで帰って行った…と?」
「はい、真っ青なお顔をなされて…」
「そう…一体どうされたのかしらねぇ…?」
考え込む素振りをしつつもロザリーは思う。
(まさか会話を聞かれた…!?もしそうなら早急に手を打たないとマズいわね…)

一方、ヘーデンは予想外の事態に激しく狼狽していた。
家に帰り着くなり自室に閉じこもり、夕食の時間にも「気分が優れない」と言って顔を出さなかった。
バンならいざ知らず、ヘーデンに関して言えばそんな事は今まで無かったので、さすがに父クラーズも心配したが、翌日にはもう彼は元に戻っていた。
「昨夜は心配したぞ。…変な事を聞くようだが、ロザリー殿と何かあったのか…?」
朝、クラーズに問われ、ヘーデンは一瞬、本当の事を打ち明けるべきか否か逡巡した後、嘘をついた。
「…いえ、父さん。何もありませんでしたよ。昨日は本当に調子が悪くて…」
「そうか、体調管理には気を付けるんだぞ?」
「はい!」
ヘーデンは元気良く頷いて見せた。
…が、実は彼は内心、未だ穏やかではなかった。
父に言える訳が無いではないか…義姉が兄を殺そうとしているだなんて…。
それを父に告げる勇気が…口に出して言う勇気が彼には無かった。
結果、一人で悶々と悩む事になる。
(…義姉(あね)のあの本性を考えれば兄さんとの夫婦仲がうまくいっていなかった事は想像には難くないが…しかしまさか殺意を抱く程とは…まあ良い。とにかく兄さんに命が狙われているという事を伝えなければ!…いや待てよ?もし二人の仲が(表面上だけだとしても)僕の予想より悪くなかったとしたらどうだ?兄さんに伝える事で二人の間に決定的な溝を構築して取り返しの付かない事になってしまうかも…いやいや兄さんは命を狙われてるんだ!迷っている暇は無い!…あぁ!でももし義姉に一片でも兄さんへの情があれば説得が可能かも知れない!やはりこれは僕一人で何とかした方が…!)
かくの如く昼も夜も悩み続けた結果、彼は次第に憔悴し、やつれていった。

「…ーデン!ヘーデン!!おいコラ!ワシの話聞いとるか!?」
「何だ?今考え事をして…って、うわあぁ!!?し…失礼いたしました国王陛下ぁ!!」

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