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聖剣物語
官能リレー小説 - ファンタジー系

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聖剣物語 96

しばらくして、ロザリーはジョアンナにミネバは元気にしているか話す。
ミネバとはジョアンナが表向きラウドとの間にもうけた娘の名前でロザリーの姪でもあった。
因みに名づけ親はパラム王で孫が戦女神ミネルヴァの様な女神の如き女性になって欲しい為に肖ったのである。
「所で姉さま、ミネバは元気にしている」
「ええ、元気よ。しかも、最近はあの娘、歩けるようになったのよ」
「そうなの。今度連れてきてね〜」
ミネバの父親がラウドでないのをロザリーは知っていたが、姪のミネバは姉ジョアンナの娘でもあって非常に溺愛してたのである。
「本当にロザリーはミネバが可愛いのね〜」
「ええ、だって姉さまの娘ですもの!」
満面の笑みでミネバを可愛いというロザリー、その素直さをもう少し他者に向けて欲しい物である。

それから、数日後。
へーデンは再度、バッカーズ邸に向かっていた。
(この間の事を謝罪せねば…)
実はロザリーを散々に言い負かした事に最も驚いていたのは他ならぬヘーデンであった。
(まさか自分の中にあんな嗜虐性が潜んでいたなんて…。しかもそれをよりにもよって義姉に対して発揮してしまった…。あぁ…失態なんてレベルじゃない!これは正に暴挙だ!)
喧嘩っ早いバンとは異なり、ヘーデンは今まで人との衝突を徹底的に避けて生きて来た。人と対立が生じそうになれば相手に譲り、自分が退いてでも衝突は回避する…それが彼の生き方だった。
だが、あのロザリーに対してだけは何故かそれが出来なかった。己を抑える事が出来なかったのだ。一体何故…。
…いや、普段のネコ被りモードから一変、あの性悪っぷりを見せ付けられればヘーデンならずとも誰だって理性を保てなくなるだろう。特に彼は若いのだ。いた仕方ない…。
だが、クソが付くほど真面目で誠実なヘーデンは、物事を“他人のせい”で片付ける事が嫌いだった。
(全ては僕の未熟さゆえ…きっと僕にはまだまだ修練が足りないんだ。こんな事ではまだまだ兄さんの足元にも及ばない…!)
父クラーズには言っていないが、剣術面でも人格面でも、ヘーデンはバンを一つの目標としていた。
歳が近かった事もあってか、彼は幼い頃からバンの背を見て育ち、常にバンの立っている場所を目指して生きてきた。
だが、ようやくその場所に到達出来たと思った時には、バンは更にその先に立っていた。
いつもそうだった。
結局ヘーデンはいつまで経ってもバンに追い付く事は出来ないのであった。
それはヘーデンの中で多分に実像以上に理想化されたバンである事にヘーデン自身も気付いていない。
だが彼は一途に幻影を追い掛け続ける。
今までも、そしてこれからも…。

「せっかくお越しいただいて申し訳ございません。奥様は只今、急な来客で対応中でございまして…」
バッカーズ侯爵邸に着いたヘーデンを待っていたのは申し訳なさそうなメイドのそんな一言だった。
「いえ、構いません。また姉君のジョアンナ様がおいでになったのですか?」
ヘーデンはそう尋ねる。この屋敷にアポ無しで訪ねて来る者といえばジョアンナぐらいしか心当たりが無かったからだ。
しかしメイドの口から出たのは意外な言葉だった。
「いえ、宝石商の方でございます」
「宝石商…?」
こっちは事前に連絡を入れてあったのに、そんな訪問販売の方を優先するなんて…自分も随分と嫌われてしまったものだ…とヘーデンは思う。
「ではまた日を改めてお伺いいたします。義姉上にそうお伝えください」
「いえ、奥様によると『ほんの十数分で済む話だから』と…」
「そうですか?ならば20〜30分なら待たせていただきましょう」
「ではこちらの控えの間へどうぞ…」
ヘーデンは客間の手前の待合室に通された。お茶とお菓子が出され、メイドは退室する。静かな部屋に隣の部屋からの話し声が僅かに聞こえて来た。さすがに何と言っているかまでは聞き取れないが、何だか妙に語調が強めなのが何となく気になった。
『……!』
『…!!』
(宝石を選んでいるにしては穏やかじゃないなぁ…)
意識せずとも自然と聞き耳を立ててしまう。はっきり聞こえないとは知りつつも…。

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