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聖剣物語
官能リレー小説 - ファンタジー系

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聖剣物語 94

冷静さを取り戻したヘーデンは一気に反撃に転じた。
いや、彼は“反撃”などとは考えていない。
ただロザリーが望んだから彼女に(彼なりに考えて結論を出した)真実を突き付けてやっただけだ。
ロザリーが何も言い返せずに口元を震わせて「あうあう」言っている所を見るに図星だったのだろう。
…だがヘーデンも大人気ない。
理論で責めるのは良いとしても、彼に関して言えば容赦という物がまるで無かった。
ロザリーは思った。
(こ…こいつ…バンなんて問題にならないぐらいのドS野郎だわ!!)
何とか話題を変えて逃げなければ…とロザリーは思った。
身(プライド)を守るための逃げは許される行為だ。
「あ…ああ…あの!こ…ここ…こここ紅茶でも…いかがかしら!?これは東方の…セイロニア島で採れた最高級の茶葉で…!」
ロザリーは明らかに狼狽した口調で、震える手でティーカップを手に取って言った。
あまつさえ瞳には涙さえ浮かんでいる。
そんな彼女に対してヘーデンは一言。
「話を逸らさないでください」
「ぐぅ…っ!?」
あぁ…この男は最後に残された逃げ道まで閉ざしてしまおうというのか…いや、それだけではなかった。ヘーデンはこう続けた。
「…自分に都合の悪い話題になると話を逸らす…悪い癖です。あなたは今までそうやって他人だけではなく自分さえも欺いて生きて来たんじゃありませんか?だから自分にとって都合の悪い…そのちっぽけなプライドを傷付けられるような真実を突き付けられてもそれを受け止める器量が無い。違いますか?」
「うぅ…」
「何も言わないと言う事は認めるという事ですね?」
「…うああぁぁぁ〜〜んっ!!!!」
とうとうロザリーは泣き出してしまった。
しかも幼い子供のように声を上げてだ。
「グスン…も…もう許してぇ…もう私の負けで良いからぁ…ヒック…もう…これ以上私を傷付けないでぇ…エグ…これ以上私から奪わないでぇ…」
美しい顔を涙と鼻水でぐちゃぐちゃにしながら訴えるロザリーにヘーデンは溜め息混じりに言い放った。
「ハァ…泣けば許されるとでも思っているんですか?それに“私の負け”とはどういう事です?僕はただあなたの問いに答えただけ…それがいつから勝ち負けになったんですか?まったく…その発想自体があなたの人間性の矮小さを表しています…」
「もう嫌ああぁぁぁ!!!!」

トントン

そこへノックの音がしてメイドが入って来た。
「失礼いたします奥様、お客様がお見えになっておられますが…」
「…という訳で僕が木に登って怖くて降りられなくなって泣いていた所を兄さんが助けてくれたんですよ。あれは確か5歳の時だったかなぁ…」
「あらまあ、うふふ…あの人らしいわ。幼い頃から頼もしい御方でしたのねぇ…」
…二人は今までの会話が全て無かったかのように平然と仲睦まじい義理の姉弟を演じ始める。
「それで、来客の方は誰なの?」
ロザリーは姫君らしく御淑やかな笑顔でメイドに客人が誰なのか訊ねる。
「奥様の姉君様ジョアンナ様です」
「まあ〜ジョアンナ姉さまなのすぐにお通しなさい!」
「はっはい!畏まりました!」
(ふっふっふ、姉さま〜)
へーデンという意外な伏兵にに追い詰められた窮地に陥ったロザリーであったが、姉ジョアンナの来訪という逃げ場が出来たロザリーは思わず笑みを浮かべる。

ジョアンナ・ファン・パラムシア…パラム王国第一王女にしてロザリーの姉である。22歳。
彼女は王国宰相ゴルドリーの息子ラウドを婿に迎え(彼女はロザリーとは違って極度の男性嫌いという事は無かった)既に一子を設けていた。
ロザリーに負けず劣らずの美貌を有し、いずれはパラム王国の女王となるべき女性なのだが、浮気、不倫といった醜聞には事欠かない。
その原因は彼女の美貌もさることながら、夫ラウドにもあった。
ラウドは性に対して非常に淡泊であり、ジョアンナは常にその若い肉体を持て余していた。
その結果、彼女が夫の目を盗んでベッドに引き込んだ異性および同性の数は三桁に及び、どうも一人娘もラウドの子ではないらしい…。

さて、そんなジョアンナの来訪で我に返ったヘーデンは、急に自分のしていた事が恐ろしくなってきた。
(ぼ…僕は何という事を…!よりにもよって義姉に対して何という暴言を吐いてしまったんだ…!!)
いてもたってもいられなくなり、彼は立ち上がってロザリーに一礼して言った。
「お…お義姉さま、僕はこれで失礼させていただきます…」

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