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聖剣物語
官能リレー小説 - ファンタジー系

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聖剣物語 92

「か…閣下にはこの度、格別のご厚恩を賜りました事、誠に感謝に堪えません!本当に何と御礼申し上げて良いのやら…!」
そう言いながら踵を合わせて最敬礼するヘーデンに大蔵卿は穏やかな口調で言った。
「いやいや、良いんだ良いんだ。君の剣士としての実力は剣術大会で知っていたからね。なるほど…こうして改めて間近で見ると、兄上と同じく御婦人方の好みそうな好青年だ。しかし性格は異なるようだな。快闊豪放な兄上と違って君は礼儀正しい男のようだ…」
「あ…ありがとうございます…」
その一瞬、ヘーデンの表情が一瞬だけ曇ったのをダレルは見逃さなかった。
「フフ…純粋に誉めたのだよ。正直、君の兄上はいささか奔放な振る舞いが多すぎてね…ここだけの話、社交界での評判は微妙だった…」
「閣下…失礼を承知で申し上げますが、私は兄を…バン・バッカーズを尊敬しております。剣士としても、人間としても…」
「おっと、これは悪かった。許してくれたまえ。…だが事実でもある。その点、君は貴族連中のウケは良いよ。中には“ロザリー姫は兄上よりも君との方がお似合いだった”などと言う話もあるくらいで…」
「閣下!お戯れが過ぎます!ロザリー様は我が義姉!それ以上はいくら閣下と言えども…!」
ヘーデンは思わず声を荒げる。
ダレルは薄笑いを浮かべて尋ねた。
「私と言えども…どうするのかね?その腰の剣でバッサリかい?」
「…い…いえ、失礼いたしました、閣下…」
我に返り、シュンとして謝るヘーデン。
ダレルは内心思う。
(フン、小物が…兄なら剣を抜いていた所だろうな…)
ヘーデンは何となく居心地の悪さを感じていた。そこへ新たな人物が現れる。
「おぉ!大蔵卿とヘーデンではないか!」
「「国王陛下!」」
パラム王は上機嫌でヘーデンの両肩に手を置いて言った。
「聞いたぞヘーデン!そなた昨夜我が城に侵入したコソ泥を退治してくれたそうじゃのう!そなたがおらなんだら城の宝物庫にあるワシの秘蔵の美術品コレクションを持って行かれた所じゃったわい!いや実に良くやってくれた!誉めてとらす!」
「あ…有り難き幸せであります陛下!」
「いやぁ〜、ワシには素晴らしい臣下が三人もおる!智のダレル卿、武のヘーデン、そして聖剣の勇者たる我が義子バン!ほんっとウチは駒が揃っとるなぁ〜!これはもう本気で世界狙えちゃうと思うよワシは!うん!」
国王はヘーデンとダレルの間に立って肩を組んで何故かハイテンションである。
「せ…世界!?まさか陛下、大陸進出をお考えなのですか!?」
ヘーデンは真顔で国王に尋ねた。
「「……」」
国王とダレルはポカーンと顔を見合わせる。やがて国王は言った。
「…いやいやいや、ヘーデン。何を本気にしておるのじゃ。ほんの冗談じゃよ、冗談…」
「あ…冗談…ですか…」
「そう、ちょっとした悪ノリじゃよ。う〜む、どうもそなたはバンと違って頭が固くていかんのう。バンは冗談も通じるしノリも良いぞ」
「もっ申し訳ありません陛下」
理由はどうあれついカッと成り臣に有るまじき行為をしたと後悔したへーデンは国王に謝罪する。
「あっ気にするな。へーデン、儂が軽率であったすまぬ」
「いえ、私も臣下にあるまじき真似でした」
「まあまあ、陛下、へーデン殿それ位にしましょう」
「うむ、そうだな」
「大蔵卿、ありがとうございます」
互いに謝るパラム王とへーデンとの間に大蔵卿ダレルが間に入り場は収まった。
「しかし、大陸進出は冗談であるが…儂はこのパラムを大陸諸国や盟主のゼノン帝国に認めさせるのが夢なのじゃ!」
「陛下…」
辺境の島国パラムは大陸諸国からは軽んじられる傾向にあった。
取り立てて資源も無い、軍事・交通の面から見ても特に要所でも無い。
良くも悪くも田舎の小国だった。
「…このヘーデン・バッカーズ、兄バン・バッカーズと共にパラム王国のために身命を賭して陛下にお仕えする所存であります!」
感極まったヘーデンは床に片膝を付いて頭(こうべ)を垂れる。
「私、ダレルも微力ながら尽力いたします」
続いて大蔵卿も(立ったままではあるが)うやうやしく一礼した。
「うむ、うむ…このような忠義の臣を持ってワシは嬉しい。ともすれば国際的な地位などより、よほど得難い宝なのかも知れぬのう…」
国王も感慨深げに何度もうなずいた。
「…あぁ、ところで話は変わるがヘーデン、そなたにちょっと頼みたい事があるのじゃが…」
「は!何なりとお申し付けください陛下」

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