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聖剣物語
官能リレー小説 - ファンタジー系

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聖剣物語 91

どうやら、ゲズマは捕らえたカスターの手下を何かの実験材料に使うようである。
しかも、この男はその実験を非常に楽しんでいるようである。
「バン・バッカーズ、久々に面白い男であるな。どう料理してくれようぞ。ほっほっほ〜」
高笑いをしながら、ゲズマはどうやってバンを倒すか考えていた。
バンは途方もない連中を敵に回したのをまだ知らなかった。

一方聖剣カシウスを求めて、ゼノン帝国の首都を目指しているバンバッカーズ一行はというと。

「でも、あんた達。ゼノン帝国に聖剣カシウスを貸与を頼むのは難しいんじゃない。あてがあるのかい?」
ゼノン帝国首都である「帝都アウレア・ノヴァ」を目指し街道を歩いてるとアレイダが聖剣カシウスをゼノン帝国から借りれるのか訊ねる。
己が聖剣ダモクレスの勇者であるから大丈夫とバンは自信満々に答える。
「あてならあるだろう!なんせ、俺は聖剣ダモクレスの勇者なんだぜ!」
「あんた本当に猿山の大将ね。まあ、猿に何を言っても無駄だけどね」
「猿だと!!俺のどこが猿だ!!」
アイラに猿山の大将と馬鹿にされバンは猿のように顔が真っ赤になりキーキーと怒鳴り出す。
その姿は以下にも猿その物であった。
「はあ〜前途多難だな」
「そうですねシスカさん」
バンの大人気ない様に思わずため息をつくシスカとメリサリムの二人であった。
それでも、バン達の順調にゼノン帝国の首都を進んでいた。

その頃、バン、シスカ、メリサリム達の故郷パラム王国では彼等が不在の間に色々と変化が起きていた。



「では父さん、行って参ります!」
「うむ、くれぐれも我がバッカーズ家の名に恥じぬ働きをするのだぞ、ヘーデン」
「はい、僕なりに最善を尽くしてみますよ」
ここはバッカーズ邸…すなわちバンの実家。
玄関にてバンの弟ヘーデンが父クラーズに見送られて家を出て行く所だ。
ヘーデンの背を見送りながらクラーズは呟く。
「ふぅ…王宮からのお呼び出しが来た時は一体何事かと思ったが…まさかヘーデンが近衛剣士隊の支隊長に抜擢とはな…」
近衛剣士隊…その名の通り王宮の警備や王族の警護を主任務とする王室専属の部隊であり、特に剣技に優れた者が貴族平民を問わず任命される。このパラム王国で剣の道を志す者にとっては正に憧れ…いわゆる一つのステータスであった。
「…国王陛下にヘーデンを推薦していただいた大蔵卿(財務大臣)閣下には感謝せねば…しかし子供らの栄達は嬉しいが、また寂しくなるなぁ…」

近衛剣士隊に入隊するには二つの方法があった。
一つは正式な入隊試験(剣術)を経ての、いわば一般枠。
そして今一つは有力貴族の推薦枠。こちらは賄賂などで買収が可能で、主に貴族や商人などの子弟の箔付けに利用されていた。
ヘーデンはこの度、この内の後者…すなわちパラム王国の最有力貴族の一人である大蔵卿ダレルの推薦によって入隊する事と相なった(もちろん彼の剣の腕前なら一般入隊試験でもパスしただろう)。
これはクラーズにとっても、またヘーデン自身にとっても正に青天の霹靂だった。
推薦される覚えが無いのだ。
通常、息子を近衛剣士隊へ入隊させようとすれば政治的影響力の強い貴族にそれ相応の“はたらきかけ”をせねばならない。
クラーズは大蔵卿に対してその類の事は一切していないし、そもそもそういう真似が彼は好きではなかった。
…という事は大蔵卿は純粋にヘーデンの剣技を見込んで推薦してくれた…という事になる。
口さがない者は“バッカーズ家は政治的野心に目覚めて次男まで宮廷に送り込んだ”などと噂したが、正に第三者の言う所の“真相は神のみぞ知る”であり、弁解のしようが無いのがクラーズにとっては歯がゆかった。
一方、当のヘーデンは“心にやましい所が無いのであれば、その類の噂話は気に留めなければ1ヶ月も経たずして自然消滅する”と考えて割り切り、ただただ自分を引き立ててくれた大蔵卿に感謝していたのだった。

そしてヘーデンが王宮に出仕し始めて一週間が過ぎたある日、彼は王宮の回廊で“その人物”と初めて直接言葉を交わす機会を得たのであった。
「やあ、君がヘーデン・バッカーズ君だね」
「あ…あなたは…!!」
そこに居たのは年の頃五十代前半と思しき堂々たる雰囲気を身にまとった男だった。
彼こそヘーデンを近衛剣士隊に推薦した張本人、大蔵卿ダレルである。
彼はパラム人ではない。
大陸生まれの自称“仕法家”だ。
仕法家とは“経済屋”という意味だそうで、今風に言えば“経営コンサルタント”といった所だろうか。
今から約20年前、当時深刻な財政難に直面していたパラム王国に突如として現れた彼は、王宮に自らを売り込み、画期的な経済回復政策案を提唱した。
その話に興味を抱いた国王は何と彼を大蔵卿、すなわち財務大臣に大抜擢…その結果わずか数年でパラム王国の財政難は見事に解消された。
そもそも氏素姓も良く知れぬ人間を国家の要職に登用するなど他国であれば有り得ないような話だが、それを平然とやってのけてしまう所がこの国の面白さであり、強みであり、そして“隙”でもあった。

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