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聖剣物語
官能リレー小説 - ファンタジー系

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聖剣物語 90


やがてバンは顔を上げたが、その表情を目にした女達は絶句した。
返り血を浴びた彼の瞳には修羅の色が宿っていた。
それは自分の甘さのせいでエミリアを死なせてしまった事への後悔、そして怒り……いや、それだけではない。
明らかに悔いや怒り以外の何かがバンに宿っていた。
「あ…主殿…?」
初めて見るバンの貌(かお)にシスカは不安げに彼を呼ぶ。
その声には応えず、バンは倒れたままのカスターの手下達の方を見やった。
「まずい…バン!!止めるんだ!!」
アレイダは咄嗟に剣を抜いてバンの前に立ちはだかった。
次の瞬間、バンとアレイダの剣がキィィンッと鋭い音を立てて打ち合う。
「アレイダ!!邪魔するんじゃねぇ!!そいつらを皆殺しにしねぇと俺ぁ気が収まらねえんだ!!」
「落ち着きな!!こいつらを一人残らず殺した所で死んだエミリアは生き返りゃあしないんだよ!!もう事は終わったんだ!!無駄な血で手を汚す事ぁ無い!!あんたは聖剣の勇者なんだろう!?」
「聖剣の勇者!!?ふざけるなチクショウ!!俺は人を斬らねぇなんて戯れ言をほざいて、目の前の女をみすみす死なせて、それで一体何が聖剣の勇者だってんだ!!?どけ!!アレイダ!!邪魔立てするってんならテメェだって容赦はしねぇぞ!!?」
「ダメだ!バン!お前は憎しみに我を忘れてる!気絶してるヤツを殺すなんて、殺戮狂に成り下がる気か!?」
「私はバンに賛成よ…」
アイラが口を挟んだ。
「…なぜバンの邪魔をするのアレイダ?バンが殺りたいって言ってるんだから殺らせてあげれば良いじゃない。このさき旅を続けていく中で、また今回みたいな…いいえ、これ以上の修羅場に出くわす事がきっとあるわ。今の内に“殺し慣れ”しておいた方が良いわよ」
「ふざけるな!いくら殺した所で死んだ人間は生き返りゃあしないんだ!そんな事して死んだエミリアが喜ぶと思うのかい!?」
「あ〜の〜…」
「何だいメリサリム!?ちょっと黙ってなよ!」
「…いえ、エミリアさん、死んでないんですけど…」
「「「えっ!?」」」
メリサリムは説明した。
「とりあえず私のヒール(治癒魔法)で止血しておきました。処置が早かったので出血を最小限に抑えられましたよ。じきに目覚めるでしょう。あとは体内の弾丸の摘出ですが、これはお医者さんにお任せしましょう…」
「メ…メリサリム…お前、治癒魔法使えるとか、そんな設定あったの…?」
「設定?いえいえ、巫女の心得です♪」
思わず怒りも忘れ、半ば唖然として尋ねるバンにメリサリムはウィンクして言った。


そして…
「バン様、それに皆さん、本当にありがとうございました。一度ならず二度も救っていただいて…本当に皆さんにはお礼のしようもございません」
「良いって事よ。お前らが無事で何よりさ…それより体ん中の弾、早く医者に診せて取り出してもらえよ」
エミリアの教会へとやって来たバン達はエミリアと子供達に別れを告げていた。日が明ける前に聖都を出るつもりだった。子供達は口々に言う。
「俺、大きくなったらバン兄ちゃんみたいな強い剣士になるよ!」
「私はバンお兄ちゃんのお嫁さんになる〜♪」
「おう、そいつぁ楽しみにしてるぜぇ…へへへ」
そう言いながらバンはイヤらしいニヤケ顔を浮かべ、少女の頭を撫でてやる。
「勇者様…」
「主殿…あなたという人は…」
「待て待て待て…ほんの冗談だ」
女達からの軽蔑の視線にバンは慌てて弁解した。
そして一行は今度こそ本当に聖都ルーシェアを後にしたのであった。
目指すは北…大陸一の大国、ゼノン帝国である。

炎の聖剣カシウスを求めバン一行がゼノン帝国に向かっている頃、枢機卿ゲズマは聖都ルーシェアにある自分の私邸で茶を飲みながら、カスターがバン暗殺に失敗した報告を秘書から聞いていた。
「ほっほっほ、そうかカスターは敗れたか」
「御意、あっさり敗れました」
「せっかく石火矢を与えたのに、使えぬ奴よのう〜まあ、塵は何をやっても塵という事だな」
報告を聞いたゲズマはバンを始末できなかったカスターの無能ぶりに笑い出す。
その上、聖職者でありながら死んだカスターを塵と嘲笑うのであった。
「次に、ご命令通り。カスターの手下達は捕縛しておきました」
そんなゲズマの非常さに秘書は無表情で淡々とカスターの手下を捕縛したのを報告する。
「ほっほっほ、よくやったぞ!大儀である。では、予定通りカスターの手下共は強化モンスターの実験材料にせよ」
「御意、畏まりました」
カスターの部下が捕縛した報告をゲズマは嬉々とした聞きながら、秘書にカスターの手下達を何かの実験材料にするのを命じる。

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