PiPi's World 投稿小説

聖剣物語
官能リレー小説 - ファンタジー系

の最初へ
 84
 86
の最後へ

聖剣物語 86

「…バンの幻想を打ち砕くようで悪いが、私の父親は軍略家としては天才だったが、人間としては最悪な男だったよ。私の記憶の中の父は大抵いつも酔っていた…。気の向くままに母や他の妾達を犯し、少しでも気に入らない事があれば大暴れし、時には怒りに任せて自分の召使いや妾や子供を殺したりもした。私も幼い頃は父から殴る蹴るの暴行を良く受けた。正直あの頃は何度死を覚悟したか解らないよ…」
「なんてこった…ウチのクソオヤジが天使に思えてくるぜ…」
「そ…そんな…お父さんからそんな酷い仕打ちを受けるなんて…」
「確かに最悪な父親だな…」
「……」
三人が各々の感想を口にする中、アイラだけは黙ったまま聞いていた。
アレイダは続ける。
「…ま、結果的には父の暴力は私が成長するにつれて減っていった訳だが…」
「解ったぜ!お前が強くなってオヤジも腕力じゃあ適わなくなったんだろう!?」
バンは言う。
アレイダは「ハハハ…」と少し笑って首を横に振った。
「…ハズレだよ。そうだったら良かったんだけどね…」
「?…じゃあ何でなんだ?」
「主殿…これ以上はもう…」
何となく話の先を察したシスカがバンをたしなめるが、バンは話が全く解らないので平然と言う。
「何で止めるんだ?お前、気にならねえのか?」
困惑するシスカに当のアレイダは笑いながら言った。
「大丈夫だよシスカ、ありがとな。…まあ端的に言うとだな、私が大きくなるにつれて父は私を“女”として見るようになったんだ。おかげで暴力も無くなった。我ながら上手いこと父好みの女に成長したもんさ。そういう風に産んでくれた母に感謝だな」
「なるほどな…で、貞操の危機を感じたお前はオヤジの元から逃げ出した…と、そういう事だな?」
「…………あぁ、まあそうだ。そういう事だよ」
「そっかぁ〜、お前も色々苦労したんだなぁ〜」
「「「……」」」
バンは労うようにアレイダの肩を軽くポンポンと叩いたが、メリサリム、シスカ、アイラの三人は黙り込んでしまった。
アレイダの返答までの一瞬の間が、何かを語っていたような気がしてならなかったからだ。
だが三人にはそれ以上突っ込んで尋ねる気は無かった。
アレイダもアレイダで、一番自分の過去に興味を持っていたバンがそれで納得してくれるのであれば、あえて真実を懇切丁寧に語る事もあるまいと思い、少し端折って早めに話を切り上げたのだった。
アレイダ自身の中では既に気持ちの整理も付いているが、聞いて楽しい話ではないのだ。
話さずに済むなら話さないに越した事は無い。
あるいはバンがあそこで口を挟まなければアレイダは全て話しただろうか…。
それはアレイダ自身にも判らないのだった。

バンは言った。
「でもよぉアレイダ、お前は今は幸せなんだろ?」
「ん、今かい?…そうだな。今は幸せだよ。何せ逃げて来たおかげでこんな面白ぇ仲間達に会えたんだからね!」
そう言うとアレイダはニッと笑った。
「そうか、ならお前は逃げて来て正解だったな!例え過去にどんな辛い事があったとしても、今が幸せだってんなら、その過程も含めて全て正解なんだぜ。これは俺の死んだ祖父さんの受け売りだがな」
「そうか…正解なんだな…」
アレイダは微笑み、そして思った。
(私の人生で一番の幸福は、この底抜けのバカに巡り会えた事だったのかもな…)


「アレイダ、気を悪くしたら悪いけど…」
「やれやれ、その手の前置きから始まる話題ってのは大抵ロクなもんじゃないんだよね…まあ良いさ、何だいアイラ?」

あの後、少し遅い夕食を取った一行は各々部屋で寛いでいた。
部屋割りは、メリサリムとシスカ、アレイダとアイラがそれぞれ二人部屋、バンが一人部屋という風に別れた(もちろんバンは物凄く嫌がったが…)。
アイラはアレイダに言った。
「…実は私ね、さっきの話を聞いてて、あんたに嫉妬したわ。あんたが物凄く羨ましく思えたの」
「アイラ……お前マゾなのか?」
「断じて違うわ!!」
アイラは即否定する。そして「ハァ…」と一息ついて言った。
「…あんたは自分が何者なのかをちゃんと知ってる…最低な人間かも知れないけど、親って物を知ってる…それが私には羨ましいのよ…」
「なるほどね…過去の話をするとだいたい同情されるか、気まずい空気になって嫌がられるかのどっちかだったんだけど、羨ましがられたってのは初めてだね」
「気を悪くしたのなら謝るわ…」
「いや、構わないさ。人それぞれに事情がある。誰もが同じ考え方をする訳じゃないし、だからこそ面白い。気にしないよ」
「助かるわ…」

一方、一人部屋にされたバンは何やら考え込んでいた。
「う〜む…難しい問題だ…これは究極の選択だな…」
一体何をそんなに悩んでいるのかというと…
「メリサリムとシスカの部屋に夜這いを掛けるか…それともアレイダとアイラの部屋に夜這いを掛けるか…う〜ん…悩むなぁ…」
この男はまったく女とヤル事しか頭に無い人間であった…。
しかし次の瞬間、バンの(本人にとっては)高尚な思索は中断を余儀無くされるのである。

ガッシャアァァァァァンッ

「な…何だぁ!!?」
突如として何かが窓ガラスをブチ破って室内に飛び込んで来た。
見るとそれは一本の矢だった。
壁に突き刺さったその矢には手紙が結び付けられていた。
「一体何だってんだ!?まさか密かに俺を恋い慕う女の子からのラブレター…は無いか…」
バンは手紙を開いて読んだ。

SNSでこの小説を紹介

ファンタジー系の他のリレー小説

こちらから小説を探す