PiPi's World 投稿小説

聖剣物語
官能リレー小説 - ファンタジー系

の最初へ
 81
 83
の最後へ

聖剣物語 83

「な…っ!?き…貴様ぁ…ぐあぁぁ〜〜っ!!!?」
「…思い起こせば今から十五年は前の事じゃったかのう…ワシがお主を法王に据えてやったのは…」
苦しみ、のたうち回るセルモノーを後目にゲズマは昔を思い出すようにしみじみと語り出す。
「…当時のお主は聖都神官学校を優秀な成績で卒業したキャリアであったにも関わらず出世コースから外れて世の全てを恨んでおったのう…。『こんなはずではなかった』、『なぜ誰も私の事を理解してくれないのか』…お主は毎日のようにグチをこぼして過ごしておった。ただただ毎日々々我が身の不幸を嘆くのみ…。そんなお主の態度に、初めはお主に対して同情していた人間達も呆れ果て、皆お主の元を去っていった。そこにワシが現れてお主にこう言った。『お主を法王にしてやろうか?』とな…。お主はもう大喜びで飛び付いて来たのう。…あれから15年じゃ。お主はこの聖都をお主の理想の姿に作り替えた。さぞや満足した事であろう?」
「うがあぁぁ…っ!!!?ま…満足など出来るかぁぁ!!!まだじゃ!!!まだ余の理想の世界は完成には程遠い!!!余に従わぬ国は幾らでもある!!!余は法王じゃ!!!!この世に並ぶ者無き最も尊い存在なのじゃあ!!!!余を神と崇める王道楽土をこの地上に築く事こそ我が神聖なる使命なのじゃあぁぁ!!!!」
セルモノーは血の涙を流しながら絶叫した。その瞳には狂気が宿っていた。ゲズマは溜め息混じりに言う。
「ハァ…長年の法王としての重圧にすっかり心を病んでしまったようじゃのう。お主は端っから法王の器などではなかった。自分を人の上に立つべき器だと勘違いしたタダの自惚れ屋じゃよ。…しかしその自惚れ屋も“我々”の役には立ってくれた。お主の行った極端な禁欲政策の裏で、苦しむ聖都の市民達を相手に相当な資金を稼がせてもらった。それにお主の独裁はヴォル・ヴァドス教団内に分裂と不和をもたらしてくれた。これも我々にとっては好都合じゃった。セルモノーよ、お主は本当に“良き法王”であったよ…ほっほっほ」
「な…っ!!?ゲ…ゲズマ、き…貴様は一体…っ!!!?」
セルモノーはゲズマの言葉に耳を疑った。信じられないというようにカッと瞳を見開き、そして彼はそのまま事切れた。

その数分後、ゲズマは法令違反者取締役のカスターを部屋に呼び出した。
「あ…っ!!!」
カスターは床に転がる法王の死体を見て絶句した。彼の顔は見る間に青ざめ、ガタガタと震えだした。
カスターは法王の権威をカサに着て今まで好き放題して来たのだ。彼の悪行は法王庁内でも広く知られており(知らなかったのは彼を採用した当の法王ぐらいではなかっただろうか)、庁内の反法王勢力からは蛇蝎の如く嫌われていた。しかし法王の手前、誰も彼に手を出す事が出来なかった。その後ろ盾である法王が死んだのだ。今や彼はいつ殺されてもおかしくない立場となった。
「カスター、見ての通りじゃ。法王が死んだ。皆に知れ渡るのも時間の問題じゃろう」
「…殺ったのはアンタだろう?ゲズマ様よぉ…」
カスターは恨めしげにゲズマを見つめた。
「ほっほっほっ、言いたい事はそれだけか塵虫小僧〜」
「塵虫小僧ォ、ジジイ!馬鹿にすんじゃねえ!!痛めつけてやろうか!!」
塵虫と馬鹿にされたカスターはゲズマに殴りかかろうとする。
しかし、その瞬間!!
ヒューーーーーーーン!!!
「ギギャアァァ!!みっ耳が!俺様の耳があぁ!!」
「ほっほっほ、カスター少しは男前になったではないか〜」
ゲズマは呪文を詠唱せず瞬時に魔法を放ちカスターの右片方の耳を切り落とした。
右耳を切り落とされたカスターは余りの痛さにのた打ち回る。
そして、カスターの哀れな姿をゲズマは愉快に見ながら、切り落としたカスターの右耳を踏みつける。

「なぜだ…!?」
カスターは叫んだ。
「なぜセルモノーを殺った!?ヤツはアンタの傀儡(操り人形)だったはずだろう!?」
「そりゃあ…いくら可愛い人形でも壊れてしまったら処分せねばならんじゃろうが。それに我々の目的は既に達せられた。法王庁は長年に渡るセルモノーの独裁によってすっかり弱体化し、既に我々に対抗し得る勢力にはなり得ぬ。我らは邪魔されずに安心して計画を遂行出来るという訳じゃよ…ほっほ…」
「…あんたが裏で何かの組織に所属して水面下で動いてた事は勘付いてたが……枢機卿様、あんた…いや、あんた達、一体何を企んでやがる…?」
「それはお主が知る必要は無い。もし余計な詮索をしたりすれば…」
ゲズマは傍らに転がるセルモノーの死体を見やる。その耳から何か虫のような生き物が這い出して来た。

SNSでこの小説を紹介

ファンタジー系の他のリレー小説

こちらから小説を探す