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聖剣物語
官能リレー小説 - ファンタジー系

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聖剣物語 82

それは奇妙な形をしていた。リング状で、大きさはちょうど腕にはめられるぐらい。よく見るとそれは蛇の意匠だった。ウロボロスというのだろうか、一匹の蛇が前の蛇の尻尾を飲み込んでいて、その前の蛇はその更に前の蛇の尻尾を飲み込んで…というように8匹の蛇がぐるっと円環状に連なっている。蛇の目にはルビーらしき真っ赤な石がはめ込まれていた
「…何だコレ?」
「アザトゥス教団のシンボルとでも言うべき物じゃよ。邪神アザトゥスの姿を象った物であるとも言われておる」
「これがアザトゥスなのか…」
バンはその腕輪をまじまじと見つめた。
「いや、それは一つの解釈に過ぎん。アザトゥス自身がどんな姿をしておるのかは誰にも解らん。見た者がおらんからのう。実体を持たぬ精神生命体であるという説もあるが…」
「そうかぁ……でも待てよ?これを持ってるて事は…爺さん!まさかテメェ…!」
バンは聖剣の柄に手を掛け、ゲズマに向かって言った。
「ほっほっほ…どうした?いきなり恐い顔をして…まさか、ワシがアザトゥス教団の一員だとでも言うのかね?ヴォル・ヴァドス教団の法王に次ぐ枢機卿の地位にあるこのワシが…」
「ああ!もしそうならアザトゥス教団にとっては実に理想的な事じゃねえか!」
バンは剣を抜き放ち、ゲズマに突き付ける。
「…なんてな、考えすぎか…」
しかし次の瞬間には警戒を緩め、剣を鞘に戻した。
「それに爺さんには助けてもらった借りがあるからな。仮に敵だとしても今ここでは斬らねえよ」
「ほっほっほ…それは助かるよ。それにしてもお主の考えはなかなか面白いぞ。確かにこのワシがアザトゥス教団の信徒という事になれば、かの教団にとっては極めて理想的という事になるからのう…何せ敵の中枢を掌握しておるのじゃからのう」
ゲズマは法王にアレイダとアイラの謁見を認めさせた。つまり彼は法王に意見出来る人間であるという事になる。そんな地位にある者さえアザトゥス教団の人間だとしたら…その闇の影響力は計り知れない。

「さあ、もう話は終わりじゃ。早く逃げるが良い。その腕輪はアザトゥス教団の信者から没収した物じゃがお主にやろう」
「おう!爺さん、色々教えてくれてありがとよ!」
バンはゲズマに別れを告げると今度こそ女達の待つ部屋へと急いだ…。


法王セルモノーはバンが去った後も、しばらく一人でさめざめと泣き続けていたが、ふと何かに思い至ったようにバッと立ち上がると、涙を拭いて叫んだ。
「ゲズマ!!ゲズマはおるかぁーっ!!」
「はい猊下、お呼びでございますか?」
すぐにゲズマ枢機卿が現れる。それはそうだ。ずっと部屋の外に居たのだから。法王はそれを不信とも思わない。彼は怒りに燃えたぎっていた。
「ゲズマ!!今すぐ神聖騎士団に命じてバン・バッカーズを殺せ!!」
「ほっほっほ…それはまた随分と物騒なお話ですな猊下。それにそのお顔、一体いかがなさいました?」
「バッカーズにやられたのじゃ!!あれは聖剣の勇者などではない!!聖剣の勇者を騙る詐欺師だったのじゃ!!」
唾を飛ばしながらまくし立てる法王に対し、ゲズマはあくまで穏やかな態度を崩さず応じる。
「おやおや、しかし彼はダモクレス神殿にて聖剣を抜いた正真正銘の勇者であると伺っておりますが…」
「いや!!そもそもそれが間違いだったのじゃ!!法王である余が言うのじゃから間違い無い!!法王が聖剣の勇者でないと言ったらヤツは聖剣の勇者ではないのじゃ!!余を…法王を殴った男が聖剣の勇者であるものかぁ!!偽者は殺せぇ!!聖剣を取り戻せぇ!!聖剣は我々法王庁が管理し、真の勇者が現れた時にその者に譲渡するのじゃぁ!!」
「何と…」
さすがのゲズマも言葉を失った。セルモノーは勇者を殺して聖剣を奪い、己が意のままになる偽の勇者を立てようと言い出したのだ(彼の中ではそうでないのかも知れないが…)。セルモノーは更に続ける。
「…そうじゃ!!いっそのこと余が聖剣を所持して聖剣の勇者になれば良いのじゃ!!聖剣を持つ者が聖剣の勇者なのじゃ!!聖剣を手に入れれば余が聖剣の勇者じゃぁ!!」
「ほっほっほっほ、左様でございますか〜」
「ゲズマ!笑っておらんで!神聖騎士団を動かして!バン・バカーズーを殺せっ!!これは命令ぞ!!」
バンを亡き者にして聖剣を奪い己が勇者なると叫ぶセルモノーのトチ狂った姿をゲズマは楽しそうに眺めるだけであった。
そんな自分を見下すゲズマの態度にセルモノーは苛立ちヒステリーを起こして怒鳴り出す。
「ほっほっほ、あのバン・バッカーズを殺すのは少し早計ですぞ〜」
しかし、早計だとゲズマは相変わらず好々爺な態度でセルモノーをやんわりと諫言する。
「貴様、枢機卿の分際で!余に指図すっ!うっ!!頭が、苦しいぃぃ!!」
命令を聞かないゲズマを錫杖で打ち据えようとするセルモノーであったが、突然頭を押え苦しみ出した。
「ほっほっほ〜我らの傀儡になるしか能がない塵男が、我に逆らうからじゃよ。」
頭を押さえのた打ち回るセルモノーの情けない姿をゲズマは余興の一つの様に見物していた。

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