PiPi's World 投稿小説

聖剣物語
官能リレー小説 - ファンタジー系

の最初へ
 79
 81
の最後へ

聖剣物語 81


怒りに任せて法王をブチのめしたバンを廊下で待っていたのは、あのゲズマ枢機卿であった。
「ほっほっほ…バッカーズ殿、やってしもうたのう?」
立ち聞きでもしていたのであろう。ゲズマは呑気に笑って言う。本来なら彼は即刻バンを捕えて罰さねばならない立場だ。バンは大袈裟に両手を広げて半ばヤケクソ気味に言った。
「ああ、やっちまったな。だが後悔はしてねえぞ。さあ!俺はどうなる?死刑か?それとも終身刑か?」
「まあまあ、そうヤケになるでない。法王様はお主を殺したり閉じ込めたりするような真似はすまいよ。お主は聖剣の勇者じゃからのう。法王様はご自分に法王としての権威が備わっておらぬ事を良くご存知じゃ。聖都ぐらいならヴォル・ヴァドス教団の神威と神聖騎士団の武力で従えられるが他国となるとそうもいかん。ゆえに聖剣の勇者としてのお主の人気と実力をアテにしたのじゃよ」
「ヘンッ…そいつぁおめでてぇこったな。俺が本物の勇者じゃねえかも知れねえって事も知らねえで…」
「ほ?何か言うたかの?」
「い、いや!何でもねえ、タダの独り言だ」
ゲズマはまた「ほっほっほ…」と笑って言った。
「…しかしまあ、殺したり閉じ込めたりはしないまでも、言う事を聞くように魔法でお主の心を殺して感情の無い肉人形にする…ぐらいはされるかも知れんのう。あとはお主のお仲間の美しいご婦人方を人質に取るとか…いずれにせよ、お主は早く法王庁を去った方が良さそうじゃわい」
「マ…マジかよ!?」
「マジじゃ。ちなみに法王様は“衆道”のご趣味もおありじゃから、肉人形にされた暁には夜の方のお相手もさせられるかものう…」
「ゲェ〜…ますます捕まる訳にはいかねえな。それにしても坊主ってヤツぁホモの集団なのか?まさか爺さん、あんたも…?」
「ほっほっほ♪さ〜て、どうかのう?…ま、いずれにせよワシは何も見ておらんし何も聞いておらん。たった今法王様と有意義な会見を終えて部屋を出て来た聖剣の勇者殿と廊下で偶然出くわして世間話に花が咲いた…って事で…」
「…そうか、爺さん、ありがとよ!恩に着るぜ!」
バンはメリサリム達の待つ部屋へと急ごうとしたが、ふと思い直してゲズマに尋ねた。
「そうだ爺さん、感謝ついでにもう一つ聞きてえんだが、聖剣って一体何のためにあるんだ?」
以前あの女占い師にはぐらかされた話を思い出したのだ。
「ほほう…それをこのワシに尋ねるのかね」
「誰に尋ねたって良いだろう。爺さんは法王庁のお偉いさんだから知ってるよな?以前ある女に“世界を破滅の危機から救うため”だと聞いたんだが、その“破滅の危機”ってのが解らねえんだ」
「…そうか。ならば教えてやろう。聖剣が存在する理由…それはのう、このエスパニア世界を滅びへといざなう邪神を封じるためじゃよ」
「邪…神?」
「そうじゃ。その名をアザトゥスという。世界を滅ぼす神じゃ」
「……」
バンは阿呆のようにポカーンと口を開けていた。いや、いきなり世界を滅ぼす邪神とか言われても、とてもじゃないが信じられない。
「そ…そのアザーッスとかいうのをやっつけるために聖剣があるって事で良いのか…?」
「アザトゥスじゃ。この恐るべき邪神は定期的に眠りから目覚めて世界に危機をもたらすと言われておる。
そもそもアザトゥスとは神々がこの世界をお造りになった際に世界の負の要素が凝縮して形成された怪物じゃ。この怪物が初めて人々の前に姿を現したのは今からちょうど5000年前の事…。これにより世界は滅亡の危機に瀕した。しかしこれを憂えた神々は三人の人間の巫女姫に三本の剣を与え、アザトゥスに対抗する力とした。三人の巫女姫は哀れにも命を落としたが、その魂は死後それぞれの剣に宿り、これが三聖剣となった。三聖剣は今も大切に受け継がれておる…何故か解るかな?」
「…再びアザトゥスが復活した時のために…か?」
「その通りじゃ」
「じゃ…じゃあ俺が今になってその内の一本であるダモクレスの聖剣を引き抜いたって事は、アザトゥスの復活が近いって事なのか!?」
「…そこまではワシの口からは何とも言えんのう。しかしアザトゥスの復活を望む者達もおる。アザトゥスは今から500年前に一度目覚め、当時の聖剣の勇者の一人によって封印された。幸い完全覚醒でなかったため、三人でなく一人でも封印が可能であった訳じゃがのう…ほれ、大聖堂の入り口にその勇者殿の彫像があったじゃろう」
「彫像…そんなもんあったか?」
「あったぞ。帰りに見て行くと良い。なかなかの男前じゃぞ。…話が逸れたのう。その500年前のアザトゥスの半覚醒というのが、実はアザトゥス復活を望む人間達の手によって成された事だったのじゃよ」
「そんなヤツラが居るのか!?許せねぇ!ヘタしたら世界が滅ぶじゃねぇか!」
「うむ…それこそがヤツラの望みなのじゃよ。いや、ヤツラにとってはそれは“滅び”などではない。輝かしい新たな時代の始りなのじゃ。ヤツラ“アザトゥス教団”はそう信じておる…」
「…アザトゥス…教団…」
バンは噛み締めるようにその名をつぶやいた。
「そうじゃ。ヤツラの実態は把握できておらんが、どうも相当に強大な勢力らしい…。我らヴォル・ヴァドス教団が光の宗教だとすればアザトゥス教団は闇の宗教じゃ。ちょうど邪神アザトゥスが世界の負の部分であるようにな…」
そう言うとゲズマは懐から何かを取り出してバンに渡した。金属製らしい小物だ。

SNSでこの小説を紹介

ファンタジー系の他のリレー小説

こちらから小説を探す