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聖剣物語
官能リレー小説 - ファンタジー系

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聖剣物語 80

法王が自分に話があると言われバンは思わず怪訝な表情をなってしまう。
聖剣の聖霊が自分の側にいないのに、法王と個人的に出会うとボロが出るんじゃないかと恐れたからである。

「何で、俺一人だけなんだ?」
「それは私にも解らぬ。しかし、法王様は今すぐに個人的に会いたいそうなのじゃ」
「解ったよ。俺も法王に話があるんだ!」
「ほっほっほ、それは良かった。では、私はその旨を法王様に伝えましょうぞ」
バンが法王と個人的に謁見するのを了承すると。
ゲズマは人の良い好々爺な笑みを浮かべ部屋を後にした。
「主様、良いのですか!」
「そうです。もし、勇者じゃないと知られたら大変ですよ!」
「まあ、乗りかかった船だね」
「けどよ〜このまま逃げても埒が明かないぜ。それに俺は法王に一度がつんと言いたかったんだよ!」
法王との謁見にシスカとメリサリムは反対するが、法王のやり方に疑問があるバンの決意は揺るがなかった。
バンの決意にアレイダは好きにしなと快活に答える。

「ひょっとして昨晩のカスターの一件のこと、バン」
「その通りだぜ、アイラ!」
バンが法王と個人的に会いたい理由が昨晩のカスターの一件だとアイラは気づく。
「昨晩は何があったのですか、勇者様」 「どうやら、訳アリですね」
「実はよ〜昨晩、アイラで出会ってよ〜」
昨晩バンが宿を出てシスターエミリアと孤児たちが法王の配下カスターにひどい目に遭わされそうになった出来事とエミリアや孤児たちの窮状を話す。

「勇者様、立派です」 「聖都の惨状がここまでひどいとは…」
「だろう〜だから、俺は法王のおっさんに一発ガツンと言いたいんだよ!!」

そしてバンは一人、法王の待つ部屋へと向かった。

「おお!良く来た、バン・バカーズよ。さあ、ここに座るが良い」
出迎えた法王セルモノーは妙に気さくで、自ら椅子を引いてバンに勧めた。
「あ…ありがたく思います、猊下…」
あまりにフランクな態度に思わず呆気に取られながらも椅子に座るバン。…いや、確かに人間的には好感が持てるが、仮にも法王ともあろう者が取るべき態度ではないように思う。
セルモノーはテーブルを挟んで反対側に腰掛けた。
「…で、率直に言わせてもらうが…」
「いきなり本題っすか…どうぞ…」
「…バン・バカーズ!そなたを余の右腕にしてやる!本日より余に仕え、余の理想の世界を造る手助けをするのじゃ!」
「お断りします、猊下」
「な…っ!!!?」
バンの即答にセルモノーは絶句する…が、すぐに正気に戻ってまくし立てた。
「何じゃとおぉぉ!!?そなた!!自分が何を言ったか解っておるのか!!?余の…法王の命令であるぞ!!?身の程をわきまえよ!!!」
セルモノーは信じられないという顔でテーブルに両手を付いて勢い良く立ち上がって怒鳴った。負けじとバンも立ち上がり、言い返す。
「うるせえバカヤロウ!!!!身の程知らずはテメェの方だろうが!!!!」
「……っ!!?」
一瞬、セルモノーはビクッと身を強ばらせた。無理も無い。法王の座に着いて十数年…誰かに怒鳴りつけられる事など一度も無かったのだから。バンはそんな事は知らない。彼は言った。
「まず俺は“バカーズ”だなんて改名した覚えは無え!!!俺ぁ“バッカーズ”だ!!!頭に良く叩き込んどけ!!!それに“理想の世界を造る”ってのが気にくわねえんだよ!!!テメェの理想の世界ってなぁどういう世界なんでぇ!!?」
「そ…それは…!全ての国々がこの聖都の如く清浄であり、人民は神を敬い欲望に惑う事無く秩序正しく生きてゆく…そのような世界じゃ!!どうじゃ!!素晴らしいであろうが!!!?」
「最低だっ!!!!」
次の瞬間、バンは法王を思いっきりグーで殴り飛ばしていた。
「グハァ…ッ!!!?」
法王はぶっ倒れ、泣き叫んだ。
「な…殴ったな!?この僕を殴ったなあぁぁ!!?親にもぶたれた事の無いこの僕をおぉぉ…っ!!!」
「なら俺が100回でも1000回でもぶん殴ってやらぁ!!!!」
バンは法王に飛びかかり、馬乗りになって何発も何発も殴り続けながら叫んだ。
「何が“清浄”だ!!!何が“欲望に惑う事無く秩序正しく”だ!!!美味い食い物、酒、音楽、芸術…人間の生きる喜びを全て奪い取って人々を貧困と欠乏に追いやり、その上さらに恐怖で支配するのがテメェの“秩序”なのか!!?テメェのオナニー法令のせいで街の人間達がどんな暮らしを強いられてるのか知ってるのか!!?あの塀の外側の世界をテメェは知ってるのか!!?テメェのクソくだらねえオナニーのせいで家族を奪われた子供達がどれだけいるか!!!その子供達に毎日の飯を食わせるために身体を売って生きている女がいるのを…テメェは知ってるのか!!!?それがテメェの造ろうとしてる“理想の世界”なのか!!!?」
「…ひ…ひぎいぃぃ!!!ご…ごめんなしゃいぃ!!!ゆるひてくらはいぃ!!!ゆるひてくらはぃぃ!!!」
セルモノーはもう泣きじゃくりながら謝るしかなかった。彼の顔面は真っ赤に腫れ上がって顔の形が変わっている。バンはようやく立ち上がり、法王を見下ろして言った。
「…俺は人を苦しめるだけのそんな“地獄”を造る手伝いなんざ真っ平ごめんだ!」
それだけ言うと彼は踵を返し、部屋を後にした…。

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